『トルコは完全に舵を切ったのか』

2017年10月 8日

 

 トルコの動向が複雑になってきている。既に、これまでEUとの関係は最悪の状態になり、エルドアン大統領をして『EUに加盟しなくてもいい。』と言わしめている。

 しかし、これはエルドアン大統領の強気の、表向きの発言なのであろう。ユルドルム首相はその後すぐに、関係を改善する意志がある、と言っているし、EUの中心であるドイツとの関係も、改善する意向だということを、口にしている。

 アメリカとの関係が、劣悪であることは、言うまでもない。アメリカ市民を投獄した後、アメリカ領事館のトルコ人スタッフを、逮捕してもいる。このトルコ人スタッフについては、トルコ政府は『逮捕していない。』と言っているが、では彼はいま、どのような立場に、置かれているのであろうか。

 他方、ロシアとトルコとの関係は、すこぶる好転しているようだ。これまで長い間、ロシア側から制裁を受けていた、トルコの対ロシア経済活動は、次第に緩和されてきている。トルコからのロシア向けトマトの輸出が、そのシンボルのようになっていたが、それも解除される見通しだ。

 トルコはロシアから、S400ミサイルを輸入することを決め、既に手付金を支払った、とも報じられている。これはNATO諸国なかでもアメリカに、少なからぬショックを、与えたものと思われる。NTAO側はNATOの武器とスペックが合わないため、不具合が起こる、とクレームを付けているが、トルコは聞く耳を持っていない。

 そして、今度始まったのは、シリアにおけるトルコとロシアとの、合同軍事作戦だ。シリアのイドリブに対する攻撃で、トルコは陸軍を派兵し、ロシアは空軍を使い、挟み撃ちにするという作戦なのだ。

 多分この作戦は成功するだろうが、それはアメリカにとっては、極めて不愉快な状況が、始まるのではないかと思われる。アメリカは基本的に、シリアのアサド体制を、潰したいと考えているからだ。

 加えて、イドリブ作戦はそこに陣取る、アメリカ支援を受ける、SDFが打倒される危険性が、高いということでもある。トルコ側は『トルコには自国の国境を守る権利があり、この作戦はシリア問題への介入ではなく、あくまでも祖国防衛作戦だ。』と主張している。

 イドリブ作戦が成功した後は、トルコとロシアとの関係は、一層強化されよう。ロシアは自国の陸軍を派兵することなく、トルコの陸軍を使って目的を達成することが、出来るようになるのだ。その露土協力軍事行動は、今後、他の紛争地帯にも、当てはめられるのではないのか。

 トルコはいま、トルコ・イラン・ロシアという、3ヶ国の連携を進めているが、これは中東地域の軍事状況を、一変させる可能性があることを、否定できない動きであろう。それをアメリカが放置するとは、思えないのだが。