NO4721 10月21日 『ラッカ陥落後に待ち受ける米への重圧』

2017年10月21日

 

 シリアのラッカが、SDF(シリア民主軍)の手に落ちた。IS(ISIL)はほぼ完全に、ラッカから追放され、あるいは殺害され、あるいは逮捕されたようだ。その事はラッカ住民にとって、最高の喜びであろう。

 しかし、その後には、ラッカがIS(ISIL)侵入前のような状態に、回復出来るのか否かという問題が、持ち上がってくる。あるいは、シリア軍がラッカに、圧力を掛ける前の状態、つまり、シリア内戦ガ起こる前の状態に、戻すということだ。

 この現実を前にして、アメリカ政府は相当頭を、悩ましているものと思われる。アメリカ政府はラッカ住民に、家を建ててやり、食糧を与え、学校を再開してやらなければ、ならないからだ。医療サービスも必要であろう。

 2014年以来、ラッカを支配下に置いていたIS(ISIL)は、そこで法を定め、通貨を発行し、パスポートを発行していたのだ。IS(ISIL)は彼らの組織を、イスラム国家と名乗り、ラッカをその首都だ、と宣言していたのだから、ある意味ではこうしたことを行ったのは、当然であったろう。一時期は、マスコミを通じて、IS(ISIL)の発行した金貨の写真が、広く報じられてもいた。

 アメリカ政府はラッカの住民に対して、人道的な援助を送ることは当然であり、IS(ISIL)のもたらした精神的拘束からも、解放しなければなるまい。また、各所に設置された爆弾、地雷なども、撤去しなければなるまい。

 そして、ラッカに地方政府を設立し、民主化も図らなければなるまい。それには、地域の人種民族への、権限の配分も考慮しなければならない、ということだ。そうしなければ、新たな衝突がラッカの住民の間で、起こってしまう危険性があろう。

シリア政府にしてみれば、アメリカの息のかかった、新しいラッカの誕生を、邪魔したいと思うだろうし、ロシアやイランもしかりだ。つまり、アメリカが努力しても、ラッカは極めて不安定な状況に、あるということだ。

莫大な資金と、ラッカの正常化への地方政府に対する、統治支援には、アメリカから多くの分野にわたる、専門のアドバイザーも、送り込まなくてはなるまい。それ無しには、ラッカ住民だけでは戦後の復興には、時間がかかり過ぎてしまうからだ。

だが、そのラッカへの支援に、アメリカ政府はどれだけの資金をつぎ込み、専門のアドバイザーを、送り込めるだろうか。それに比べ、イランやロシアの方は、アメリカが考えるような、贅沢なことは考慮しないであろうから、復旧は案外早くできる可能性がある。

アメリカはこの場合も、世界に呼びかけて、負担を強いるのであろう。国連はそのいい道具になろう。もちろん金満大国の日本は、応分の負担を強いられよう。日本政府はいまのうちから、覚悟しておいた方がいいだろう。