中東諸国のなかで、最もアメリカと深い関係にある、トルコとサウジアラビアが、最近になり、揃ってロシア接近を始めている。それは場合によっては、中東の政治地図、を完全に塗り替えるかもしれない。
一体、トルコとサウジアラビアに、何が起こったのであろうか。ある国際問題の専門家は、アメリカがトルコとサウジアラビアの現体制を、打倒する意志を固めたためだ、と書いていた。
確かにトルコに関しては、アメリカとトルコとの間には、齟齬が発生しており、ギクシャクした関係になっている。だが、だからといってアメリカのトランプ大統領が、トルコのエルドアン体制を、潰すのだろうか。
述べるまでも無く、トルコはNATOの有力メンバー国であり、アメリカから大量の兵器を、輸入してもいる。これまで、アメリカはトルコの協力の下に、幾つもの中東問題を、有利に展開してきてもいた。
しかし、冷静に見ていると、アメリカにとっていまのトルコが、必要なのかという、必要論に突き当たる。アメリカに取ってはトルコの存在は、イラク・シリアを経由する、ガス・ルートの確立には、無くてはならない協力国であった。だが、その目的は既に、達成されたようだ。
それではサウジアラビアはどうであろうか。サウジアラビアもトルコと並び、アメリカの中東戦略の、最大の協力国であった。サウジアラビアの資金が、大きな役割を果たしていたのだ。
ところが、トルコとサウジアラビアは、最近になりロシアに急接近し、アメリアの独壇場であった、兵器の市場にロシアが、介入してきているのだ。そのひとつは、S400という長距離ミサイルであり、その性能は高く評価されている。
最近では、ロシアの兵器の方が、アメリカのそれよりも、優れているのではないか、という話も出ているほどだ。ロシアのS400ミサイルが優れているのか、あるいは、アメリカのサード・ミサイルが優れているのかは、意見の分かれるところであろう。
サウジアラビアのサルマン国王は、訪露時に兵器の自国生産への協力を、ロシアから取り付けているし、サード・ミサイルの輸入も決めている。これはアメリカにとっては極めて不愉快なことであろう。アメリカはロシアという商売敵に、最も重要な顧客のところへ、割り込まれたのだから。
トルコも同じであろう、同国もロシアのS400の輸入を、決めているのだ。こうしたトルコとサウジアラビアの、アメリカに対する立場の大きな変化は、体制打倒かどうかは別にして、アメリカに対する強い、不振の結果であろう。
そのアメリカへの不信は、トランプ大統領に対するものなのか、あるいはアメリカ政府そのものに対する不信なのかは、判断しかねる。いずれにせよ、今後、中東におけるアメリカの地位は低下し、ロシアが台頭していき、影響力を拡大していくことは、確実であろう。