石油大国として覇者の地位を、長い間記録してきていた、サウジアラビアがいま、経済困難に陥っている。この状況は少なくとも、2020年までは続き、その後も改善の希望は無いようだ。
結果的に、いまのサウジアラビアの失業率は、12・8パーセントということだが、実際の数値は多分、これの10パーセント加えた、20パーセント台ではないか、と思われる。
サウジアラビアの経済が悪化しているのは、述べるまでも無く、同国の唯一の収入源である、石油価格の低迷であろう。そもそも、石油価格を引き下げたのは、サウジアラビアだと言われて久しい。イランに対する圧力であったろう、と言われていた。またアメリカのシェールオ・イル潰しだ、とも言われていた。
石油以外の産業の成長率は、限りなくゼロに接近している、と見られている。石油が高騰し、国家収入が増えれば、サウジアラビアでは建設業を始め、輸入業も活性化するが、石油だけに頼っている国では、石油価格が下がれば、他は駄目になって当然であろう。
サウジアラビアのムハンマド・サルマン皇太子が、日本を訪問し、『石油以外の産業を伸ばしたい。』といったが、所詮絵に描いた餅、サウジアラビアはそんなことが出来る、産業の下地が出来ていないのだ。人材も教育も何もかもが、成長していないのだ。
このままの経済状況が推移すれば、2020年には国家は大赤字になる、ということのようだ。それを防ぐには、IMFの勧告通りに、水や石油を値上するということだが、それは社会不安を起こしかねない、危険性があるのだ。
そうした苦しい台所事情にもかかわらず、何故、サウジアラビアはイエメンで戦争を継続し、イラクやシリアに介入し、イランとの緊張関係を生み、カタールとも関係悪化の状態を、生み出しているのか。
加えて、こうした戦争状態と、戦争の危険からであろうか。サウジアラビアは今年110億ドル相当の兵器購入を、アメリカと合意したが、最近になって、また150億ドルのサアド・システム購入を発表している。これではサウジアラビアの経済状態が、悪化しても無理は無かろう。
アメリカは自国の経済困窮から抜け出すために、サウジアラビアに犠牲を強いているのであろうか。アメリカだけではない。サウジアラビアのスレイマン国王が、ロシアを訪問したが、そこでも100億ドルレベルの、S400ミサイルシステムの購入の合意が交わされているのだ。
サウジアラビアのような金はあるが、外交力も軍事力も無い国は、アメリカやロシア、そしてヨーロッパ諸国からむしり取られる、ということであろう。大分前だがある湾岸のプリンスは『武器を買っても、我々には高度過ぎて使えない、買わなければ体制を潰される。』と嘆いていた、という話を聞いたことがある。