NO4705 10月5日 『エルドアンのイラン訪問と成果』

2017年10月 5日

 

 トルコのエルドアン大統領が、イランの首都テヘランを訪問したが、何が話し合われ、そして、何が成果として、出てきたのであろうか。トルコとイランは中東で、最も危険な要素を含んでいる、国同士であるだけに、興味が沸く。

 今回のエルドアン大統領と、ロウハーニ大統領との間のメインテーマは、クルド自治区の問題であり、シリア問題だったようだ。クルドのイラクからの分離独立については、両国共に反対であり、トルコもイランもイラク軍と合同で、クルド自治区に接する、国境地帯での軍事訓練を行い、クルド自治政府に圧力をかけている。

 それ以外には、イラン・トルコ間の貿易の話が、行われたようであり、イランはトルコへの石油輸出を増やすことを、既に決めており、イランはトルコヘの石油輸出量を、142パーセント増やした、と伝えられている。

 加えて、興味深いイラン・トルコの合意には、両国が自国通貨で貿易を始めることに、合意したことだ。これは両国にとっては、極めて好都合な合意であろうが、ドルの世界支配体制を維持している、アメリカにとっては極めて不愉快な、動きであろう。

 貿易の決済をドルではなく、自国通貨で行うという動きは、ロシアと中国との間でも進んでいるし、BRICSでも進んでいる。これが今後ますます拡大していけば、ドル安が起こることは必定であり、アメリカの世界支配構造が、崩壊する危険性がある、ということだ。

 これら以外には、トルコとイランはイラク・クルド自治区で予定されている、大統領選挙と議会選挙について、話し合ったようだ。実際にこの選挙が行われれば、クルド自治区の独立への動きは、前進することになろう。

 イスラエルがクルド自治区独立への動きを、支持していることもあり、イランは警戒しており、『クルド自治区が独立することは、もう一つのイスラエルが、中東地域に誕生することだ。』と警告している。

 しかし、トルコとイランはシリア問題では、妥協が生まれるのがせいぜいであり、大きな協力体制が生まれるとは、いまの段階では考えられない。単純な表現をするならば、トルコはシリアのアサド体制を、打倒したいと考えており。他方、イランはアサド体勢を守りたい、と思っているからだ。

 中東ウオーッチャーのなかには、クルドの独立についても、アサド大統領の今後についても、大きな新しい枠組みが出来ており、表面に出ている現象は、嘘だと判断している人もいるが、そこまでは推測を広げたくはない。

 入って来る情報と、常識的な判断で、現在の動きを見るのが、妥当ではないのか。国際情勢を見ている者にとっては、予測が的中することは、魅力的なのだが、あまりかんぐると、陰謀論者と呼ばれたり,ハッタリ屋と見なされたりする場合がある。