『火を吐くエルドアンの反EU演説』

2017年10月14日

 

 アメリカに対して『トルコはアメリカを必要としない』とエルドアン大統領が発言したのは、つい数日前だった。そして今度は、EUに対しても『お前たちは正直ではない、トルコはEUを必要としない。』という内容の発言を1013日にしている。

 エルドアン大統領はトルコのEU加盟について『お前たちが正直なら、EUはトルコを加盟させたくない、とはっきり言うべきだ。我々はEU加盟を必要としてはいない。』と語ったのだ。つまりトルコのEU入り交渉は、もう止めにしようということだ。

 エルドアン大統領が腹を立てているのには、ビザ・フリーの問題がある。トルコがEUのメンバー国になり、トルコ人がビザ無しでヨーロッパ諸国を、訪問できることを望んで、交渉してきたのだが、未だにこの問題は進展していない。

 エルドアン大統領は相当このビザ・フリー問題で、腹を立てているのであろう。それは多くのトルコ人が、自由にヨーロッパ諸国に入ることを、強く望んでいるからだ。なかでもドイツ訪問は、300万前後のトルコ人が居住しているために、トルコ国民の間から強い要望があるのだ。エルドアン大統領は『俺たちは哀れに、EU入りのビザを待ち続けるのか?』と問いかけている。

 エルドアン大統領はEU諸国が、本音を隠してトルコを、EUに入れないようにしている反面、テロリストたちには手あつい対応をしている、と怒っているのだ。ヨーロッパではトルコがテロリスト組織とみなしている、幾つものグループが自由に行動し、現地政府から生活支援を、受けてもいるのだ。

 『ヨーロッパ諸国はテロリストに対して、自由を与えているが、彼らは正統なトルコ政府に攻撃を仕掛けている。』とエルドアン大統領は怒鳴りまくっている。EU諸国はトルコに対して、昨年715日に起こったクーデター以後、人権無視の対応をしている、とも非難しているのだ。

 なかでもトルコとドイツの関係は、最悪の状態にある。ドイツのメルケル首相は公然と『トルコはEUに加盟させるべきではない。』と発言しているのだ。そのドイツはトルコにとって、最大の貿易相手国であり、関税合意が結ばれているのだから、話はややこしい。

 エルドアン大統領は今年実施された、大統領権限拡大の国民投票で、在EUのトルコ人との大集会を企画し、閣僚を派遣したのだが、ドイツはもとより、オランダでもオーストリアでも、集会は全て禁止されている。その問題もエルドアン大統領が、激怒している理由の一つだ。

 さて、エルドアン大統領のアメリカに次ぐ、EUへの決別発言は、今後どのようはリアクションを、引き起こすのであろうか。ヨーロッパ人は総じて冷静な対応をするのであろうが、それは言い方を変えると、冷血な対応ということになる。

 エルドアン大統領が激高すればするほど、EU諸国の対応は厳しいものになろう。