時を同じくして、アラブ湾岸2カ国とイスラエルとの間に、関係促進を期待させる、動きが出て来た。ひとつはバハレーンがホロコースト博物館を、今年中に建設するという動きだ。
そうしてもうひとつは、アメリカの元中東和平担当者であった、デニス・ロス氏がイスラエルの環境会議で、サウジアラビアの果たす、中東和平問題解決への役割は重大だ、と語ったことだ。彼はサウジアラビアがアラブ代表団を結成して、イスラエルを訪問すべきだ、とも語っている。
バハレーンについては、カリーファ首長はイスラエルへの自由な訪問が、実現されなければならないと語り、アラブ・ボイコットを止め、イスラエルとの正式な外交関係を、持つべきだと語った。
他方では、イスラエルのシモン・ウイゼンタール・センター代表のマルビン・ヘイアー氏が、2017年の年頭にバハレーンに招待され、首都のマナマを訪問している。そこで彼が見たものは、モスクだけではなく、ヒンズー寺院やキリスト教会、そして規模は小さいが、ユダヤ教のシナゴーグだった。
バハレーンの首都マナマは異なる宗教が、平和的に共存している、という現実を発見したということだ。そして今年ロスアンジェルスで開催された、世界宗教者会議にはエジプト、クウエイト、マレーシア、アラブ首長国連邦、アゼルバイジャンからの代表も参加した。
そこでは、バハレーンのオーケストラがイスラエルの国家、ハテイクバを演奏したのだ。また会議のキー・ノート・スピーカーは、バハレーンの皇太子が勤めている。彼が主張したことは、あらゆる宗教間の寛容だった。
ちなみに、バハレーンの宗教徒別人口は、ムスリムが70パーセント、クリスチャンが14・5パーセント、ヒンドウ教徒が10パーセントとなっており、ユダヤ教徒は1パーセントとされたが、実質は少なく、36~40人程度であろう。
バハレーンにはユダヤ人の、バハレーン人外交官がいるが、彼女は2008年から2013年駐米外交官を勤めた。彼女の名前はホダ・エズラ・エブラヒム・ノヌーで、オリジナルはイラク・ユダヤだ。
サウジアラビアについては、サウジアラビア政府からの動きでは無いが、アメリカのデニス・ロス氏が、サウジアラビアはもっと中東和平で、役割を果たすよう希望する旨の、発言を行っていることだ。
彼に言わせると、イスラエルとパレスチナは、ある種のデッド・ロックにぶつかっており、問題を改善できないでいる。パレスチナはサウジアラビアか、他のアラブ諸国からの働きかけ無しには、何も出来ないというのだ。
イランの湾岸諸国への脅威は、拡大しているが、アメリカがこの問題から手を引くこともありうる、そこでアラブはイスラエルとの関係を、改善すべきだ、ということだ。確かに、イランはアラブ・イスラエルにとって、共通の敵になっており、イスラエルの敵でもあるのだ。