ロヒンギャという言葉を、ほとんどの日本人は知らないだろう。親日国で知られるミャンマーで起こっている、イスラム教徒追放と弾圧問題の発生地なのだ。
既に、公式数字で400人の、ロヒンギャの人達が殺され、数千の家が破壊され、放火されたと伝えられている。ロヒンギャを逃れる難民は、川を越え悪路を歩き続け、隣国のバングラデッシュに向かって、行進しているのだ。
その光景は何枚もの写真で、インターネット上では公開されている、胸までつかる水の中を、空腹で進んでいるのであろうから、相当な苦難だと思われる。しかも、一部ではミャンマー軍や警察による、暴行がロヒンギャの人達に、加えられてもいるのだ。
このロヒンギャ問題はイスラム世界では、大問題だとして注目されており、トルコのエルドアン大統領、イランのハメネイ師、エジプトのアズハルのトップらが、対応策を取るべきだ、と主張している。それは、ロヒンギャの人達がイスラム教徒である、ということもあろう。
イランの世界イスラム覚醒会議事務総長の、アリー・アクバル・ベラヤテイ氏は『これはシオニストによって仕組まれたものだ。』と言い出している。しかし、彼は具体的な説明をしていない。受け手の側からすれば、パンチの効かない主張なのだが。
彼アリー・アクバル・ベラヤテイ氏は、『いまロヒンギャで起こっていることは、ムスリムに対する虐殺であり、追放であり、エスニック・クレンジングだ。そして地域の安定を損なうものだ。』と激高している。
彼はまた、国連の人権委員会やOIC(イスラム国際会議)、世界の国々は立ち上がるべきだとも訴えている。ノーベル賞を受賞したミャンマーの、スーチー女史は『この問題は間違った情報のキャンペーンだ。』と突っぱねている。
数日前、このロヒンギャ問題は、イギリスと中国の利害が対立して、起こっているものだ、という解説が出ていたが、今回のアリー・アクバル・ベラヤテイ氏の、シオニズムに結びつけた主張は、根拠の薄いもののような気がする。
問題は、根拠を示さずに、こうしたことが主張され、繰り返されているうちに、嘘でも真実として国際社会のなかで、定着していくことだ。それは新たな悲劇を生み出す、危険な兆候であろう。