『キルクークは誰のものかクルド独立投票』

2017年9月 5日

 

 925日には、イラク北部のクルド地区で、クルド独立をめぐる国民投票(クルド住民投票)が、行われる予定だ。この投票にはキルクークの帰属が、クルドになるという、一項目も含まれている。

 クルドの独立そのものが、イラク政府にとっては、大問題であることに加え、キルクークがそのクルドが独立したときには、クルド領土になるということが、一層問題を複雑化させることとなった。

 述べるまでも無く。キルクークはイラク国内にあって、一大産油地帯だからだ。そこを独立したクルドが、支配することになれば、イラク政府はもとより、トルコやイランにとっても、放置できない問題になる危険性があるのだ。

 クルド側が大産油地帯を支配すれば、武器の購入が大幅に拡大し、独立したクルド国家は、周辺諸国も含め、軍事的脅威となるからだ。イラク政府ばかりではなく、トルコやイランがクルドの独立と、キルクークの支配について、激しく抗議しているのはこのためだ。

 これに対して、クルドのバルザーニ議長は『キルクークはクルドのものだ。』と主張し、『キルクークの所有のためには、いかなる敵ともクルド人は、最後の一人まで戦う。』と語っている。キルクークは何百年にも渡り、クルド人と他の民族が、共存して来た地域だとも、バルザーニは語っている。

 キルクーク地域はクルド人が、住民の大半を占める地域だが、それ以外に、トルコ系のトルクメン人や、アラブ人も居住しているのだ。サダーム・フセイン時代には、キルクークの所属を明確にするために、彼はアラブ・イラク人を、キルクークに大量に移住させ、そこに住んでいたクルド人を追い出した、という経緯がある。

 クルド人は外国(特に欧米)が、イラク問題に介入する度に、独立の口約束をして利用してきたために、現在なお独立できないでいる。クルド人は世界最大の、国家を持たない民族といわれて久しい。

 今回のIS(ISIL)によるイラク侵攻のなかで、クルドの部隊が敢然と戦い、IS(ISIL)を放逐したことは事実であり、それなりの褒賞をクルド側が求めても、当然であろう。今回はクルド独立にとって、千載一遇のチャンスということであろう。

 イラク政府はクルド自治政府との間で、領土問題、石油収入の分配などを、話し合う意向を示してはいるが、イラク憲法ではクルドの独立は、認めないことになっている。今後、この問題はIS(ISIL)問題が完全に解決すれば、さらに激しい交渉の、問題となることであろう。

 いずれにせよ、今度925日に開催される、クルドの国民投票は、この問題の先行きを、示すことになろう。クルド自治政府は戦い抜くのか、あるいは国際調停を含む、何らかの解決に向かうのか。