『結局米軍はISのバスを攻撃しなかった』

2017年9月 3日

 

 レバノンの軍とヘズブラが、IS(ISIL)と交渉し、レバノン・シリア国境から、IS(ISIL)戦闘員と彼らの家族が、シリアに向かうことを許可した。17台のバスと11台の救急車が連なって、シリアの砂漠を進んだのだが、途中、シリアの砂漠で、前進を阻止されている。

 アメリカ軍がこのバスを攻撃しないのは、戦闘員300人に加え、彼らの家族つまり女子供が、バスに同乗しているから、人道的に出来ないということだ。また移動するIS(ISIL)の戦闘員と家族には、水や食料も支給されている、ということであり、命の危険は無いということであろう。

加えて、アメリカ軍のブレッド・マクガード司令官は『ISの戦闘員は戦闘のなかで、死ぬべきだ。しかし、彼らをイラクに向かわせるつもりは無い。』と語っている。

アメリカ軍のブレッド・マクガード司令官は『300人の戦闘経験者がいるが、家族同伴なので攻撃はしない。戦闘員を一箇所から、他の場所に移動させることは、問題の解決にはならない。』とも語っている。

イラク政府側の立場は強硬だ。イラクのアバデイ首相は『『イラクはシリアにIS(ISIL)の戦闘員を、追い出したことは無い。』とヘズブラやシリア政府がIS(ISIL)と取引し、合意したことに対する、不満をぶちまけている。

IS(ISIL)は今回のレバノンからの脱出で、シリアのイラク国境に近いデルズールに移動し、その後、イラク領内に進攻し、残存のIS(ISIL)戦闘員と合流するということを、考えているのではないか。

その移動に、IS(ISIL)はイラクの市民ではなく、今回は彼らの家族を、人間の盾として使った、ということであろう。それは今までのところ、成功している。人間の盾にされていた、多数のイラクやシリアの市民は、アメリカの空爆で殺害されているが、今回はそうはなっていないようだ

 レバノン政府・ヘズブラ・シリア政府とすれば、厄介で危険なIS(ISIL)を、自国領土から追い出せれば、とりあえずは安全だ、という判断であったろう。そして、今回の交渉では、ヘズブラ・レバノン政府とIS(ISIL)との間で、戦闘員の遺体交換と、人質の交換が合意された、と伝えられている。

 アラブ世界イスラム世界では、遺体を正しく埋葬することは、最も基本的な家族の義務になっているために、重視したのであろう。遺体は水で清められ、白い布に包まれて、埋葬されるのが普通のやり方だ。彼らは天国に行けるのであろうか。