レバノンとシリアの国境にある、カラモーンからIS(ISIL)の戦闘員と、彼らの家族たちが、バスでシリアのデルズールに移動することが、ヘズブラとIS(ISIL)との間で、合意された。
しかし、この合意にはアラブ諸国から、反対の声が上がっている。それは、結果的にこの合意は、シリアのデルズールにIS(ISIL)を集結させ、彼らの勢力回復の機会に、なりかねないからだ。
イラクのアバデイ首相は、デルズールがシリアとイラクの国境に近いことから、激怒している。イラクでのIS(ISIL)の復活を許すことになり、危険が再度押し寄せてくる、と懸念されるからだ。
シリアのアサド大統領も不満ではあろうが、ヘズブラのこれまでの協力もあり、激しい非難の言葉は、口にしていない。あるいは、アサド大統領はIS(ISIL)が再度イラクに向かう、と考えているのであろうか。
今回のIS(ISIL)のレバノンからシリアへの移動で、いち早く行動を起こしたのはアメリカ軍だった。アメリカ軍は移動するIS(ISIL)の車列に対して空爆をし、しかも、通路に当たる橋を破壊し、道路をも破壊する、という行動に出たのだ。
もう一つ驚くのは、このIS(ISIL)の移動が決定した後、すぐにヘズブラのナスラッラー師は『レバノンが完全に解放された。これはイスラエル軍のレバノンからの撤退に次ぐ、偉大な成果だ。』と語っているのだ。
ナスラッラー師はまた、イラクのアバデイ首相の非難に対して、『IS(ISIL)の戦闘員は、100人を少し超えるくらいの、戦闘意欲を失った連中であり、何らイラクの脅威にはならはない。』と主張している。
このIS(ISIL)のレバノンから、シリアへの移動については、それに先立って、アメリカ政府がレバノン軍に、武器を供与するという合意が、なされている。そのすぐ後に、IS(ISIL)の移動が決まったということは、アメリカ軍のレバノンへの武器供与と、IS(ISIL)の移動が、何らかの繋がりを持っている、と考えた方が自然ではないのか。
アメリカは、レバノンで包囲された状態に、なっていたIS(ISIL)を、レバノンへの武器の供与で、釈放させたのではないか、ということだ。アメリカ軍のIS(ISIL)の車列に対する攻撃では、どれだけの死傷者が出たのか、報告を目にしていない。あるいは、道路や橋は破壊しても、実質的には車列に対しての攻撃は、本格的なものではなかった、可能性もある。
そう懸念するのは、私だけではなかったようだ。ロシア軍もこの車列に対する攻撃を、行ったと発表しているのだ、一説によれば、当初移動の人数は300人とされていたが、その後には600人を超え、バスが17台、救急車が11台も随伴した、と報告されている、大分規模の大きなものだったようだ。