『アメリカ軍は何時までシリアに駐留するのか』

2017年8月21日

 

 シリア国内のIS(ISIL)の力はイラク同様に、相当弱まってきているようだ。最後の一番大きなヤマは、IS(ISIL)が首都とだと言ってきた、ラッカが何時陥落するか、という事であろう。

 こうしたシリア優位の状況を受け、アサド大統領は『IS(ISIL)の掃討はほぼ完了したが、西側諸国はいまだに留まっている。彼らの目的がいまだに、達成されないばかりか、失敗に向かっているからであろう。』といった内容の演説を行っている。

 そうした西側の対応については、SDFが強くアメリカを非難している。彼らに言わせれば、アメリカ軍はIS(ISIL)掃討後も、何十年とシリアに留まるであろう、というのだ。確かに種々の情報を集めてみると、アメリカ軍が簡単に、シリアを手放すとは思えないからだ。

 アメリカ政府は同国のシリア駐留は、あくまでもIS(ISIL)の掃討にある、というのだが、大型の基地を何十とシリア国内に建設していることや、YPGへの対応などから、簡単には引き上げないだろうと思われる。

 加えて、アメリカはトルコとの関係がまずくなり、トルコのインジルリク空軍基地から、撤収するとも語っている。そして、代替えの空軍基地は、シリア国内に設けるということであり、現実にそれが進んでいるのだ。

 イランからイラク、そしてシリアにつながる、幹線道路沿いのシリアのタヌーフには、アメリカ軍の空軍基地が、建設されているのだ。これはIS(ISIL)対応というよりは、イラン軍がイラクを経由して、シリアに移動し易くなることを、阻止するためであり、それはイスラエルの防衛に、直結する問題なのであろう。

 アメリカ政府はラッカ攻略をめぐり、トルコとの間に決定的な溝を作ってしまい、今後はトルコよりも、クルドのYPGが主要なパートナーとなるだろうが、このことに関して、アメリカはYPGへ供与した武器は、作戦終了後回収する、とトルコ側に応えていた。

その後、アメリカはラッカ作戦が終わっても、YPGは武器を必要とするので、供与し続けると語っている。トルコ政府の語るところによれば、既に、アメリカはYPGに対して、トラック909台もの武器を、輸送したと言われている。

そして、今回のシリアからの撤退問題でも、アメリカは当初、IS(SISIL)掃討作戦が済めば、引き上げると言っていたものが、次第にそうではなく、その後も留まるという発言に、変わってきているのだ。

アメリカが今後、シリアに長期駐留するということが、事実であるとすれば、いずれかの時点で、アサド問題を処理しなければならない、という事になろう。それはロシアを意識したシリアの分割か、あるいは単純なアサド政権の打倒か、のいずれかであろう。