『リビアの混沌』

2017年8月17日

 

 ICCがリビア東部のベンガジ市にいる、ムハンマド・ワルファッリを指名手配した。彼はベンガジで少なくとも33人を処刑した、ということのようだ。処刑に当たっては、ムハンマド・ワルファッリ自身が撃ち殺したということのようだ。処刑された人たちは、頭をすっぽり袋で包まれ、撃ち殺されたと伝えられている。

 処刑された者たちは、特別に犯罪を犯した、ということではなく、ムハンマド・ワルファッリの敵対する側の、メンバーだったということであろう。戦争には正義も何も、無いのが当たり前で、正当化は勝者の側が、勝手にでっち上げるものだ。

 この犯罪はリビア東部のベンガジで起こっており、当然のこととして、ハフタル将軍の管轄下で起こったことから、彼に何らかの責任が、あろうということだ。

そうであるとすれば、ハフタル将軍はこの事件に対して、何らかの対応を、しなければならないはずだ。ムハンマド・ワルファッリは悪くない、と判断するなり、犯罪者だと判断し、当り前であろう。

 何故、ハフタル将軍が動かないのかというと、実はムハンマド・ワリファッリの出身部族が、リビアでは著名な大部族だ、ということにあるのではないか。ハフタル将軍が下手にこのムハンマド・ワルファッリを、逮捕して裁くようなことになれば、ワルファリ部族全体を敵に回しかねない。

 リビアの現状はいかにして、多くの部族を抱え込み自分の陣営を、強化するかにかかっている。ハフタル将軍はもとより、セラジ首相の側も同じことを考えていようし、他の有力部族もそうであろう。

 そうした状況下では、事の正義か否かは、あまり重きを置かれない、という事になろう。それだけ、リビア国内はいまだに不安定だ、ということだ。リビア東部で有力なハフタル将軍の側も、トリポリで首相職にあるセラジ氏も、共に絶対的な力は持てずにいる。

 ハフタル将軍はアラブ諸国や欧米、ロシアを味方に付けることにより、自陣営を優位に立たせる、工作をしているが、未だにしかるべき成果は、出ていないようだ。それは国連もアメリカ、ロシアも、そしてヨーロッパ諸国も、もう少しリビアの様子を見よう、ということなのではないか。