エジプトはシーシ大統領の統治の時代に入って、改善が見られるのであろうか。経済的には、外国からの資金借り入れなどで、帳簿上は改善しているようだ。また湾岸諸国やヨーロッパからの、投資も増えているようだ。
しかし、これらの改善はあくまでも、エジプト国内の治安状況が、改善していくという見通しに、沿ったものであり、その期待が裏切られれば、たちまちにして引き上げていく、という不安も隠せない。
しかし、貸付金はその限りではあるまい。IMFが巨額の融資をし、アフリカ開発銀行が融資をし、ヨーロッパ開発銀行もそれにならったために、エジプトの外貨準備事情は、改善されている。
それでも、エジプトは大変な台所事情にある、というのが実際の姿だ。その大きな要因は、エジプトの人口がどんどん増えており、政府は1億人を超えるのは、間もないだろう、と予測している。しかし、エジプト国民の間では、すでに1億人を超えている、という見方が大半だ。
この1億人に食料を与え、仕事と教育を与え、住居を与え、医療サービスを施さなければならないのだから、政府にとっては大変な負担であろう。『ナイルはエジプトの賜物』という言葉があるが、既に、ナイル川の水がもたらしてくれる食料では、国民の胃袋を満たすには、足りなくなっているのだ。
もう一つの問題は、テロ対応であろう。これまでも、エジプトでテロはあったのだが、それはムスリム同胞団系列の、過激組織によるものであり、政府は一定の対応策が、取れていた。
しかし、最近ではIS(ISIL)のテロリストや、そのIS(ISIL)と連携するテロリストが、エジプト国内外から集まっており、対応は容易ではなくなっている。なかでも、シナイ半島北部はテロリストの巣窟となっており、これまで多くの警官や軍人が、犠牲になっている。
つい最近も、兵士5人がシナイ半島中部で、テロリストによって殺害される、という武力衝突が、起こっている。もちろん、テロリスト側にも死者が出ており、残りは逮捕されることとなった。
シナイ北部のエルアリーシュでも、警官3人が殉死するという、事件が起こっている。こうした武力衝突がシナイ中部、北部で頻発しているのは、そこがリビアなどから密輸されてくる、武器の取引場になっていることと、それに絡むIS(ISIL)のシナイ半島への侵入だ。
しかし、シナイ半島の部族の会議を、IS(ISIL)などが襲撃し、死者が出たことから、いまではIS(ISIL)などに協力する、部族はいなくなり、全てがエジプト軍と警察に協力する体制が、出来上がっている。
いまではテロリストが次第に、南部に移動してきており、アレキサンドリア、イスマイリヤ、加えてカイロ周辺でのテロも、起こるようになっている。このため、シーシ大統領はテロ対策の、特別委員会を結成し、本格的なテロ掃討作戦を、実施していくことにしている。
その対策が成功すれば、エジプトの国内治安は大幅に改善され、それに伴って、外国からの観光客が増えることになり、外国企業の進出も増えよう。つまり、エジプトはいま、外国の銀行や機関からの協力を得て、資金状況を改善し、自らはテロ対策を実施して、事態の改善を進めているということだ。成功を祈ろう。