トルコの情報機関の名前は、MITというが、この情報機関は絶大な権限を、持っているようだ。以前、トルコがIS(ISIL)に武器を密輸するとき、トラックに満載された武器が、シリアとの国境で捕まったことがある。
しかし、国境警備隊が抑えたのだが、上からの指示だと言われ、見逃している。実はこの裏には、MITがいたのだ。つまり、MITは好きなように、武器をIS(ISIL)に送ることが、出来ていたということであり、それはエルドアン大統領の指示のもとに、行われていたということだ。
MITのトップであるハカン・フェダン氏と、エルドアン大統領との関係は、相当緊密なようだ。しかし、クーデター以来、あるいは隙間風が、吹き始めていたのかもしれない。エルドアン大統領が突然、MITは自分の直属とする、と言い出したのだ。
実はクーデターが起こる前の段階で、ハカン・フェダン氏は、クーデター計画があることを知っていたが、エルドアン大統領には伝えていなかった、という情報がある。そのことが二人の関係を、少し変えたのかもしれない。
エルドアン大統領に言わせると、大国の大統領は皆、情報機関を直接支配しているし、その結果国家は強固になる、ということのようだ。
これまでは、MITは首相の権限下にあったのだが、それはある意味で当然であろう。政府の全省庁は首相の権限下にあるわけだから、MITも首相の権限下にあったのだ。それを今回のエルドアン大統領の発言で、大統領府直属にすることになった、ということだ。
この変化は、51・4パーセントの国民の支持を集めた、大統領に対する国民投票の結果に、基づくものであり、より具体的なものにした、という事であろう。そのことは、新たな状況を生み出すわけだが、首相の権限が削がれたことについて、どう処理するのであろうか。
エルドアン大統領はユルドルム首相との、長い友好関係について語っている。つまり、自分がイスタンブール市長の時代から、彼とは協力してきたし、AKP結成以来の仲間だ、と語っているのだ。そのエルドアン大統領の発言は、ユルドルム首相の不満を、解消できるかもしれない。
さて、今回の大統領の指示で、何がどう変わるのであろうか。最初に変わり、具体的な影響を及ぼすのは裁判、法であろう。全ての情報がMITから、大統領に集められれば犯罪、反政府行動などの裁判で、大統領が裁判に影響を及ぼすことが、出来るようになるからだ。
当然のことながら、野党は大反対だ。政治家も裁判で不利になる、可能性が高いからだ。しかし、現状では野党第一党のCHPですらも、何の具体的な反対行動も出来まい。トルコのエルドアン大統領による、独裁体制はそこまで進んでいる、という事であろう