『ISはまだ終わっていない、問題は国内事情』

2017年8月16日

 

 イラクのモースル、シリアのラッカで、敗色を濃くしているIS(ISIL)だが、専門家の一部からは、IS(ISIL)が今後勢力を盛り返してくる、と見る者がいる。その一人はジュネーブの高等研究所の、メンバーであるムハンマド氏だ。

 彼の考えによれば、IS(ISIL)は戦略を変えて立ち直るというのだ。彼はISの思想、という本も書いている専門家だ。彼によればIS(ISIL)は場所を変えて、蘇るという読みだ。そして、IS(ISIL)は新たな軍事戦略と政治戦略で、巻き返してくるということだ。

 また、他の専門家であるマッショ・ギデールに言わせると、IS(ISIL)は拡大戦略をとるだろうとみている。その根拠は、イラクが今後あらゆる意味で、分裂に直面していく可能性が高いからだ。政治対立、部族対立宗派対立などであり、IS(ISIL)はこの対立を、利用することが出来るというのだ。

 こうした国内対立を防ぐには、政府がしっかりした国民憲章を、制定しなければならない、と主張している。確かに、都市部たとえばモースルでは、スンニー派国民とシーア派国民との、対立が存在する。

 そうした流れのなかで、シーア派のハシャド・シャアビー軍は、イランからの支援を受けているし、イラク、シリアでの影響力も、拡大してきている。

 イラクではバグダッド政府と、クルドのエルビル政府の間に、問題が拡大していることは事実だ。クルド自治政府は国民投票にかけて、イラクからの独立を、進めるつもりでいる。

 確かに、この二人の専門家が主張するように、IS)ISIL)には今後再生の、可能性があることは否定できない。イラクもシリアも、IS(ISIL)を取りあえず片付ければ、抑え込まれていた各派の不満が、表面化するからだ。しかし、それが原因でIS(ISIL)が再度、シリアやイラクで大きな力を、得ていくとは思えない。