トルコとEUとの間で、関税協定が結ばれたのは、1995年12月31日のことだった。それ以来、トルコとEUは、お互いにこの協定を活かし、貿易取引を拡大してきていた。
簡単に言えば、トルコ製品は関税がかからない状態で、ヨーロッパの市場に輸出され、その逆もまた然りだった。つまり、EUからトルコへの輸出も、関税がかからなかったのだ。
しかし、ここにきてドイツがこの関税協定に、文句を言い始めて、トラブルが始まっている。メルケル首相は関税協定を、改善する意志がないことを、口にしたのだ。
つまり、20年の長きに及ぶ関税協定は、既に、幾つかの問題が発生しているにもかかわらず、改定する必要は無いと言ったのだ。20年も前のトルコの経済状態はきわめて弱いものであり、当時交わされた協定の内容は、トルコにとって極めて不利なものであり、平等なものではなかったことが、推測される。
これに対して、トルコ側は今回のメルケル首相の発言は、あくまでもドイツ国内の政治問題のために、この関税協定が取り上げられたのだ、と見ている。メルケル首相はトルコに対しての支援は、最小限にとどめるとも言っているが、まさに、宣戦布告といった感じがする。
そもそも、関税協定の改正は2016年12月21日の段階で、EU側によって取り上げられたものだった。EUはトルコとの関税問題を、改善したいと希望していた、ということだ。
それに先立ち、2015年11月29日に、この問題はトルコとEUとの間で話し合われ、2016年3月18日には、ステートメントが出されていたのだ。述べるまでもなく、トルコはEUとの関税協定を重要視している。それだけに、エルドアン大統領もこの問題に、言及しているのだ。
トルコとEUとの貿易額は、現段階では、トルコのEU向け輸出が667億ユーロ、EUのトルコ向け輸出額は780億ユーロにも及んでいるのだ。つまり、トルコとEUはお互いに、大きな貿易のパートナーに、なっているということだ。
一時的な国内問題のために、この美味しい関係を壊そうと、真剣に考える国はあるまい、それはドイツのメルケル首相とて、同じであろう。だから、トルコは今回のトラブルを、ドイツ側の国内問題だ、と言い放っているのであろう。
ただ、現在のトルコの貿易事情は、極めて厳しいものがある。例えば、ロシア向けの農産物や果物は、ほぼ停止した状態にあるし、カタール向けも空輸という、非常手段を講じなければ、ならなくなっている。従って、トルコ側は過剰な反応を、ドイツのメルケル首相とEUに対して、示したのかもしれない。