リビアには二つの政府が、同国の東西に存在している。一つは東のトブルクの本拠を置き、もう一つは西のトリポリに本拠を置いている。東はハフタル将軍が実質的にトップに位置し、西はセラジが首相のポストについている。
リビアはカダフィ大佐の政権が、打倒されて以来すでに6年になるが、相変わらず内戦が続いている。そうしたなかで、ハフタル将軍の存在は大きくなってきているが、他方、セラジ首相は国連が後押ししているにもかかわらず、実力を発揮できないでいる。
セラジ首相が力を発揮出来ないのは、無理もなかろう。彼にはバックに強力な軍事組織は存在せず、これまでミスラタを中心とするミリシア部隊が支援したり、しなかったりという、関係が続いてきていた。
ハフタル将軍側は、彼自らがまとめる軍隊があるのだから、優位にあっても不思議はない。しかも、ハフタル将軍はエジプトや、アラブ首長国連邦が支援しており、加えてアメリカも陰ながら、支援を送っているものと思われる。
それはハフタル将軍がアメリカに、20年も滞在していたことから、相当の人脈を持っていて当然であろう。
ハフタル将軍側は最近、ズインタンの部族ミリシアと交渉し、カダフィ大佐の子息サイフルイスラームを、取り込むことに成功したようだ。サイフルイスラームはいまリビアの東の街ベイダに、居住していると言われている。
そして、サイフルイスラームの叔父にあたるカダーフダムは、カイロに居住しており、エジプト政府との関係は良好だということだ。彼の母親はエジプト人であり、カダーフダム氏はリビア国籍とエジプト国籍を、持っているのだ。しかも、彼には相当の資金がある、と言われている。
エジプトや他の支援国は、ここに来てリビア問題を、解決に向けようと、考え始めているのではないか。そのためには、西のセラジ首相を追い込むことが、先決であろう。ミスラタのグエイル将軍を中心とする、ミリシア組織はいま東側からトリポリを、攻撃し始めており、ハフタル将軍は南側から、同じようにトリポリを、攻撃し始めている。
たぶん、トリポリは近い将来、セラジ首相の支配から離れるのではないか。そして、セラジ首相は国外に、逃亡することが考えられよう。そのために、セラジ首相の敵側は、あえて西トリポリ側を、開けているのかもしれない。
その後のリビアは、ハフタル将軍を中心にして運営され、そこにはサイフルイスラ-ムが、登場してくることも考えられる。カダフィ大佐の息子が持つカリスマ性は、捨てがたい部分があるからだ。