『公正の行進は衝突生まず』

2017年7月11日

 

 野党第一党のCHPが仕掛けた、公正の行進は無事に、終了したようだ.450キロ首都アンカラ市からイスタンブール市への行進は、615日に始まり、79日の午後5時に終了した。

 これまでエルドアン大統領は、CHPと党首に対して、再三にわたり警告を発していたが、行進の途中でも行進の集結地点である、イスタンブールのマルテペ広場でも、何も起こらなかった。

 行進の終結地点であるマルテペ広場には、主催者側発表で200万人が集まり、政府側でも175000人が参加した、と発表している。いずれが真実であるかは別に、政府側の発表数も決して少なくはない。

 さて、政府はなぜ何もせずにこの公正の行進を、放置したのであろうか。エルドアン大統領の狭量の大きさを、見せるためであったのか、あるいは、この行進が終わりしばらくしてから、報復を始めることを、考えていたからであろうか。

 思うに、政府側は主な行進と集会への参加者を、すべて把握したはずだ。そして、彼らは全て危険人物のリストに、加えられたものと思われる。従って、彼らは近い将来、政府のリストから選び出され、順を追って逮捕、投獄されることになるのではないか。

 騒乱罪はトルコにもあろうし、器物損壊でも何でも、逮捕の理由はいいのだ。何故そう推測するかというと、これまでも今も、ギュレンがらみということで、逮捕が続いているし、クーデター関与ということでも、逮捕が続いているからだ。

 公正の行進は、結果的にエルドアン大統領に対して、逮捕の新たな口実を、与えたことになり、ひどい言い方をすると、政府が言う175000人は、逮捕予備軍の人たち、ということになろう。

 CHPにはその事が、予測できていたろう。あるいは、行進の途上での衝突も、計算済みであったと思われる。それにも関わらず、行進を実施した目的は何か、ということになるが、多分にエルドアン独裁体制を、世界に知らしめることに、目的があったのではないか、と思われる。

 そうであったとすれば、その目的は果たされたのか、ということだ。ヨーロッパ諸国ではこの問題が、ある程度広く報じられ、一定の関心を呼んだものと思われる。だが、トルコの独裁体制に対する痛烈な非難が、ヨーロッパで起こるかというと、それはあまり期待出来ないのではないか。ヨーロッパ各国は自国の問題で、いま手一杯だからだ。

 つまるところ、トルコの問題はトルコ人が、解決しなければならない、という事であろう。CHP党首のクルチダウール氏はこの公正の行進を、インドのガンジーの行進になぞらえたようだが、それはキャッチフレーズでしか、なかったのではないのか。 

 ガンジーの行進は確か、イギリスが抑えていた塩の専売システムを、破ることが目的であったような気がする。クルチダウール党首は『法の公正』ではなく、もっと明確な、エルドアン打倒のスローガンを、掲げるべきではなかったのか。惜しいことだ。