『悪化するトルコ経済政府発表はデータで覆される』

2017年7月 1日

どう考えてもトルコ経済が改善し、明るい将来が見えてくる、とは思えないのだが、相変わらず気の強い元気な見通しが、エルドアン政権から出され続けている。先進国入りを果たしたい、エルドアン大統領としては、無理からぬことなのだが、実質はそう甘くは無い。

昨日のトルコ・マスコミの報道によれば、トルコの経済状況は悪化し続けている、ということではないのか。その事をトルコの成人層に、精神病が増えているということが、示していよう。生活苦はトルコの成人男女を、苦しい状態に追い込み、精神障害を抱えるように、なっているのであろう。

トルコでは離婚も増加している模様で、これもやはり経済問題が、主たる原因であろう、昨年は離婚が82パーセントも、増えているというのだから驚きだ。先日は夫の妻や子供たちに対する、暴力事件が増えている、という記事が載っていた。年頃の娘たちはボーイフレンドと、携帯で話しただけで、名誉の殺人の対称になることもあるのだ。

 その経済問題だが、トルコ政府が最近発表したデータによれば、失業率は12パーセント程度だが、若年層の失業率は、実質25パーセントを超えている、といわれている。若者たちは父親の収入から、日々の小遣い銭を貰わなければならない、ということであり、場合によってはそれが、親子の間にトラブルを生み出す、ということになろう。

 最近発表されたニュースによれば、イスタンブール市の公共乗り物の料金が、11パーセント値上されるそうだ。これは毎日の出費になるだけに、庶民にとっては結構、厳しいものではないのか。そしてインフレ率は、117パーセント上昇している。

 トルコの貿易ギャップは、5月には43パーセントも増えた、という報道もある。加えて、トルコの対外債務は4124億ドルにも、達しているというのだ。これではカタールとサウジアラビアとの対立のなかで、トルコが貨物機を使って大量の食糧を、カタールに送りつける心理が分かる。背に腹は替えられないということであろう。

 そもそもこの巨額の対外債務は、何故生まれたかと言えば、エルドアン大統領好みの、メガ・プロジェクトを外国からの借入金で、幾つも進めた結果であろう。つまり、エルドアン大統領は自分の面子と、対外国への自慢のために、そのようなサイフを無視したプロジェクトを、進めているのだ。これがトルコ経済悪化の、最大の要因であろう。

 加えて、何がトルコの経済を大幅に、悪化させたのであろうか。第一はテロの頻発による、外国からの観光客の激減であろう。トルコ政府はロシアが多数の観光客を送ってくれる、という希望的観測をたびたび報じているが、それほどの増加にはなっていないようだ。加えて、ロシアへの農産品の輸出も、制裁が完全に解除されたとは、言え無い状態にある。

 ヨーロッパ諸国との関係が悪化していることから、ヨーロッパ向け輸出も減っている。ヨーロッパの経済が不振ということも、原因の一つではあるが、エルドアン大統領の強硬な外国対応が、顰蹙を買っているのだ。トルコにとって最大の貿易相手国である、ドイツのメルケル首相はエルドアン大統領を、気嫌ってさえいるのだ。

 アメリカとの関係も決してよくなく、最近では、アメリカはトルコが要請する、あらゆる問題を無視するか、拒否している。ラッカをめぐるSDFへの、アメリカによる武器供与では、トルコの意向は完全に無視されているし、訪米時にはエルドアン大統領のボデーガードは逮捕され、残りの8人はウオンテドになっている。このためG20には、エルドアン大統領のお気に入りのボデーガードを、連れて行けなくなっている。連れて行けば空港で、逮捕されることになるのだ。

 トルコは庶民も国家も金欠病で、これから相当長期に渡って、苦しむことになるのではないのか。