『カダフィ大佐次男の復活があるか』

2017年7月 1日

 

 もう10日ほど経過しているだろうか。エジプトの友人から電話があり、何時ものように冗談を飛ばしあった。しかし、話の内容は冗談ばかりではなかった。エジプト政府は東のトブルクに本拠を持つ、リビア政府を支援しており、リビアの国内状況については当、事者と言えるほどの立場にある。

 私のエジプト人の友人は、そのエジプトのシーシ大統領と、比較的近い距離にいる人物だ。彼は第二スエズ運河が開通したとき、大統領が乗る船上にあり、シーシ大統領のすぐ後ろに立っていた写真を、見せてくれたことがある。

 従って、彼はエジプト政府が持つ多くの秘密の情報に、触れることが出来る立場にあるのだ。その友人が電話で言ったことは、リビアの今後の話だった。以前、彼はカダフィ大佐の従兄弟の、カダフィダム氏の母親はエジプト人であり、彼はエジプト国籍も持っており、カイロに居住している、と言っていた。

 今回彼が語ってくれたのは、カダフィ大佐の次男、サイフルイスラーム氏の釈放問題と、その後の話だった。友人の語るところによれば、サイフルイスラーム氏の釈放は、東政府のハフタル将軍も絡んでおり、今後、サイフルイスラーム氏がリビア政治の舞台に、登場してくる可能性が、高いという話だった。

 確かにそうであろう。最近ではカダフィ時代を懐かしむ、リビア人は少なくない。戦乱が6年にも及び、リビア国民は安全と日常の生活に、大きな不安を抱いている。何時自分が殺されるかわからない、状況にあるのだ。

 カダフィ時代には政府が生活全般を保証し、病院も教育も無料だった。カダフィ大佐は「国民には武器を持つ権利があり、家と車を持つ権利がある。」と言い、それを実行していたのだ。それに対し、いまのリビアは戦乱のなかで、自宅を破壊され、負傷しても満足な治療は受けられず、教育はあって無いような状態にまで、落ちている。

 サイフルイスラーム氏は父親であるカダフィ大佐と、何度も民主化を主張し、意見対立している、いわば正義漢なのだ。そのことをリビア人はよく知っている。以前意見対立したとき、彼は父親に対して全ての官職を放棄する、とまで言い切った人物だ。それに対し、唯一まともな息子である、サイフルイスラーム氏を評価しているカダフィ大佐は、彼の説得に折れたと言われている。

 いまのリビアにはカリスマはいない。そのためにハフタル将軍もリビアを纏めきれないでいるし、西の政府セラジ首相もしかりだ。サイフルイスラーム氏はそうした政治環境にあって、唯一希望が持てるヒーローなのかもしれない。