『アメリカによるシリアへのガス兵器使用警告』

2017年6月28日

 

 アメリカ政府はシリア政府が、自国民に対して化学兵器を、使用する危険性がある、として監視を強化している。アメリカ政府はもしシリアが自国民に対して、化学兵器を使用するような事態になれば,場合によっては事前に先制攻撃をして、これを防ぐとまで言っている。

 これはどう考えても、無理な話のように思えてならない。シリア支持のイラン政府は、44日に起こった前例を引き、その時もシリア軍による、化学兵器使用ではなかったにもかかわらず、アメリカはシリアの空軍基地を、攻撃したと述べている。

 この44日のケースは、IS(ISIL)側が隠匿していた、化学兵器の隠匿場所をシリア軍が空爆したことで、ガス洩れが起こり、被害が出たということだった。その事実は後に、世界中で知られることとなっている。アメリカはシリア軍基地を攻撃することが最優先し、事実確認をしていなかった、といえば体裁のいい話であろう。

 加えて、最近言われているのは、トランプ大統領が情報機関の情報と分析を、完全に無視して自分の考える通りに、軍事攻撃をしているということだ。もし、その通りであるとするならば、極めて危険な兆候ということであろう。一国の大統領の気まぐれで、事実には即さない犯罪がでっち上げられ、その事に対する軍事攻撃が、実施されるのだから。

 4月のシリア軍による攻撃の際は、そこに化学兵器があることからの、シリア軍による攻撃ではなく、IS(ISIL)が集まっていたために、IS(ISIL)の戦闘員を狙ったものであり、ロシア製誘導ミサイルで攻撃が行われていた。

しかも当時の状況は、シリア政府に有利であり、IS(ISIL)は大幅に後退気味だった。また、ヨーロッパ諸国の多くは、シリアのアサド体制打倒は必要ない、という判断に至っていた。今回の場合もそうだが、シリア政府はそうしたなかでは、化学兵器を使用して、自国民を殺戮する必要は、無いということだ。

 今回はといえば、IS(ISIL)の最後の牙城である、ラッカの陥落が間近いと考えられているし、フランスのマクロン大統領はアサド政権打倒は、前提ではないと言い出している。つまり、そうした世界の潮流を阻止するために、アメリカは化学兵器という御伽噺を、持ち出したのではないのか。

このことに対するアメリカの攻撃は、後にイラクのモースルで起こった、IS(ISIL)による化学兵器使用で、アメリカの主張が崩れている。つまりIS(ISIL)は化学兵器を所持しており、それを使用してもいる、ということが証明されたのだ。

もし、今回アメリカがあいまいな根拠を元に、シリアに対して攻撃を加えるような状況が発生した場合、危険な状態が生まれるであろうことが、懸念されるのだ。それは、ロシアが既にシリア西部に侵入する、あらゆる飛行物体は、攻撃対象となる、と明言しているからだ。

もし、アメリカがシリアに対して、ミサイル攻撃や空爆などを考えた場合、ロシア軍は躊躇せずに、それを撃ち落とすということだ。もちろん、だからと言ってアメリカ軍機を、撃墜するとは思い難いが、アメリカはこのことを、再度検討すればそう簡単には、シリアに対して攻撃を、断行する気にはなれまい。

一部の専門家や事情通の間で語られているように、アメリカのトランプ大統領が第三次世界大戦を、望んでいるのであれば話は別で、まさにロシア軍による米軍への攻撃は、その口実となるということだ、こうした話はあまり信じたくない、予測なのだが。