サウジアラビアがカタールの政策に反発し、エジプトやアラブ首長国連邦、バハレーンを抱き込んだ対立は、その後、幾つかのあまり関係無さそうな国も巻き込んで、肥大化している。
サウジアラビアもカタールも、互いにアラブ湾岸協力機構のメンバー国、同じような王国であることから、時間が経過すれば収集に向かうのではないか、という期待は欧米の間にも、あったと思われる。
アメリカはこの問題では、どちらかといえば中立的な立場を取っている。本来であれば、カタールにはアメリカの最大の軍事基地があることから、もう少しカタールの味方をしても、よさそうなのだが、そうはなっていない。
もちろん、アメリカにとっては1100億ドルもの兵器を、輸入してくれるサウジアラビは、カタールよりも重要なのであろう。カタールは小国であり、何とでもなる、とたかを括っているのかもしれない。
しかし、そのカタールがサウジアラビアとの間に、トラブルを生み出したのは、カタールがサウジアラビアの仇敵である、イランとの関係を促進したためだった。述べるまでもなく、そのイランはアメリカにとって、湾岸地域最大の敵国なのだ。
カタールは今後状況が悪化すれば、イランに対して軍事的な協力を、要請することもありえるかもしれないが、そのときはカタールに駐留するアメリカ軍は、どのような立ち回りをするのであろうか。いまの段階では、このイランについてはカタールは、段階的に関係を引き下げる、と言ってはいるのだが。
他方、既にカタール支持の立場を、明確にしたトルコは、軍を派兵することを国会で決議し、5000人までの派兵枠を、明らかにしている。これに対して、サウジアラビアが反発し、トルコ軍を撤収させるよう、カタールに要求したが、カタールもトルコも、その気は無いと言っている。
トルコのエルドアン大統領はおなじみの、高飛車で傲慢な口調で、『トルコ軍をカタールから撤収させない。』と息巻いている。トルコがカタール支持で得る、経済的なメリットもあるからだ。
今回、サウジアラビアはカタールへの陸路を閉鎖し、トルコやヨルダンなどから送られる食料、なかでも新鮮な野菜や果物の輸入を阻止した。その結果、カタール国内で食糧を中心とする物資不足が起こり、カタール在住者の間で、パニックが起こった。
これに対して、空路大量の食料品を送ったのは、トルコとイランだった。これに加え、トルコが軍人の派兵数を増加させれば、トルコとカタールとの関係は、相当強固なものとなろう。
実はトルコとカタールとの間には、表面に出ていない経済関係があり、カタールは膨大な資金を、トルコに投資していると言われている。トルコがテロで観光客が減り、ヨーロッパ関係も悪化したなかで、トルコ経済が維持できていたのは、カタールの資金だった、といわれているのだ。