『カダフィ子息サイフルイスラーム釈放』

2017年6月11日

 

 リビアのカダフィ大佐の、次男であるサイフルイスラーム氏が、釈放されて東リビアに、移動することが伝えられた。これはある意味で、意外なニュースだった。これまで、国際刑事警察機構や国際司法裁判所、ヨーロッパ諸国が公正な裁判を彼に行うために、サイフルイスラーム氏の身柄を引き渡せ、と要求し続けてきていた。

 加えて、トリポリに拠点を置く歴代の政府も、サイフルイスラーム氏の引渡を要求してきていたが、それはサイフルイスラーム氏を拘束している、リビア南西部のズインタンの部隊(部族)が拒否し続けてきていて、実現しなかった。

 サイフルイスラーム氏は無罪が決定し、釈放され自由の身となったわけだが、彼はリビア東部の街、ベイダ市に居住するといわれている。ベイダ市は高原の町であり、夏も比較的温和な気候であることから、イドリス国王はここを首都とする計画を進めていたが、革命で頓挫したという経緯がある。述べるまでもなく、この街は東リビア政府つまり、ハフタル将軍の支配地域のなかだ。

 サイフルイスラーム氏は母親と共にベイダ市で生活したい、と思っているようだが、彼女はリビア国内で暮らすことを、拒否している。

 サイフルイスラーム氏が釈放されたのは、2011年にリビアで拘束されて以来、6年の歳月が経過した後だが、今回の釈放は恩赦ということだったようだ。彼は2011年のリビア革命当時、父親であるカダフィ大佐の説得をしながら、他方では革命派を弾圧した、ということだったが、彼の立場からすれば、無理からぬことであったろう。彼の釈放は先月の段階で決められていたようだ。

 さて、これまで彼は父親であるカダフィ大佐が、リビア各地に隠匿していた、莫大な金や外貨のありかを、知っているだろうといわれ、欧米諸国も彼の引渡しを、要求していたわけだが、リビアの東西政府も同様の目的を、持っていたのであろう。

 多分、ハフタル将軍がズインタンの部族と交渉して、カダフィ財宝の分割を約束し、サイフルイスラーム氏を説得して、東リビアのベイダ市に引き取ることに、なったのであろう。

 このことに加え、考えられることは、サイフルイスラーム氏がハフタル将軍の、政治の駒として、今後は利用されるのではないか、ということだ。リビアがカダフィ大佐亡き後、四分五裂し、戦乱状態のままになっているなかでは、カダフィ時代を懐かしむリビア国民も、少なくないのだ。

それだけに、カダフィ大佐の次男である、サイフルイスラーム氏が持っている、政治的大衆掌握力は、少なからぬものがあろう。リビアはここに来て、やっと変化をし始めるかもしれない、という希望が沸いてきた感じがする。