IS(ISIL)が首都だと宣言していた、シリアのラッカがいま陥落の、一歩手前に来ているようだ。アメリカがクルドのYPGと組んで、大がかりなラッカ攻略作戦を計画しており、一部は既に始まっているものと思われる、
そうしたなかで、IS(ISIL)の戦闘員たちは、ラッカに代わる拠点として、パルミラを考えており、パルミラへの移動を始めた。パルミラがIS(ISIL)にとって重要なのは、同地が世界遺産の遺跡であることから、シリア軍もロシア軍も、その他のミリシアもパルミラでの戦闘では、大掛かりな作戦は実行し難いため、激戦にはならない、と思われるからであろう。
つまり、これら反IS側はパルミラの遺跡を、壊すわけにはいかないからだ。それだけIS(ISIL)側にとっては、パルミラが作戦上、好都合な場所なのだ。いくらでも隠れる場所を構築でき、武器を隠匿できるし、近くには飛行場もあるからだ。
このため、ロシア軍はIS(ISIL)のラッカからパルミラへの移動を、阻止する作戦に出た。空爆で80人のIS(ISIL)戦闘員が、殺害されたと報告された。戦闘員に合わせて。戦闘車両36台、石油タンカー8台、砲や重機関銃を取り付けてある、ピックアップ・トラック17台も破壊された。
これに先駆け、今年の5月25日にも、ロシア軍機によるIS(ISIL)の、車列に対する攻撃が行われ、この時も120人のIS(ISIL)戦闘員が死亡し、32台のピックアップ・トラックが破壊されている。
今週の水曜日には、地中海海域から潜水艦に搭載している、クルーズ・ミサイルが発射され、多数のIS(ISIL)戦闘員が、死亡している。
こうした厳しい戦況のなかで、IS(ISIL)側が、SDF(シリアの反政府戦闘集団でアラブ・トルコマン・クルドなどで結成され、主要戦闘員はクルドのYPG )と交渉を始めている、という情報が伝わってきている。つまり、IS(ISIL)側はラッカからの安全な脱出を、実現したいと思っている、ということのようだ。
このIS(ISIL)側の要望をSDFは受け入れるようだ。それは国際的な評価を、意識したものであると同時に、ラッカから出来るだけ多くの、IS(ISIL)戦闘員を追放し、ラッカ作戦に挑みたいためであろう。
どうやら、ラッカの陥落は、時間の問題になって来ている、ということではないのか。その場合、IS(ISIL)の戦闘員や家族たちは、何処に逃れるかということになるが、常識的に考えると、トルコということになろう。
そして、トルコの南東部には、多数のクルド人が居住しており、PKKの戦闘員も居住している、ということだ。簡単に考えれば、ラッカの陥落はトルコの危機の増大、ということではないのか。
そして、もう一つの反トルコ戦闘集団として、クルドが存在する。彼らはラッカ攻略を理由に、大量の武器をアメリカら受け取っていることから、トルコ側にとっては、そう容易な相手ではあるまい。