『セラジ首相リビアを7軍区に分割』

2017年6月 3日

リビアのトリポリに拠点を置く、統一リビア政府のセラジ首相は、新たな軍の体制を発表した。それは、リビアを7軍区に分割して、イスラム・テロ勢力に対抗しよう、とする考えだ。*

一見立派に見えるアイデアなのだが、その効果はほとんど期待できないのではないか、と思われる。その7軍区とはトリポリ軍区、ベンガジ軍区、中央部軍区、西部軍区、南部軍区、セブハ軍区、トブルク軍区などだが、各軍区はそこの治安に、責任を持つというものだ。*

このセラジ首相の新アイデアは、ハフタル将軍の突出を抑えるために、リビアを細かい軍区に分けて、ハフタル将軍の影響力を削ぐことに、主たる目的があるのであろう。そのため、セラジ首相の新提案をハフタル将軍側は『単に、紙に描いただけのものであり、何の実効性も無い。』と軽視している。*

7つの軍区には、司令官のポストが用意されるわけであり、セラジ首相はそのポストと、多分給料で軍幹部たちを、引き付けようということであろう。あるいはこの新提案は、国連の指導によるものかも知れないが、そうだとすれば、国連は全くリビア人の性格を、理解していないということだ。*

現段階ではリビア西部のトリポリに近い、アジージーヤもルバイエも、ビール・ガナムも、ハフタル将軍寄りの、部隊が支配しているのだ。つまり、セラジ首相は首相とは言いながらも、ハフタル将軍の強い影響下に置かれている、あるいは包囲されている状態にある、ということではないのか。*

リビアはカダフィ大佐が統治していた時代には、三つの軍区に分けられていた。つまり、南部軍区、東部軍区、西部軍区の各軍区に、分けられていたのだった。それが革命後、4つの軍区に分割さたれていたものを、今回は新に、7つの軍区に分割する、ということだ。*

 革命後いままでは、トリポリ軍区、セブハ軍区、中央軍区、ベンガジ軍区の4つに分けられて、運営されてきていた。*

リビアの状況を判断する上で、最も重要なポイントは、石油収入を誰が抑えているか、ということではないのか。表向きは統一リビア政府が、支配していることになっている。つまり、リビアの石油収入はセラジ首相が、押さえているということなのだが。*

しかし、リビアの石油は南部東部で主に産出され、東部のブレイガ、ラースラヌーフなどから輸出されており、その東部はハフタル将軍の支配下にある。セラジ首相がハフタル将軍側を、兵糧攻めするようなことになれば、ハフタル将軍側は何時でも石油輸出を止めることが、出来る状態になっている、ということではないのか。*

最近では、エジプトのミニヤでコプト・キリスト教徒に対する、テロが発生、しそのテロにはリビア国内のイスラム原理主義者が、関与していたということを根拠に、エジプト軍はリビアのデルナなどを、空爆している。エジプトとハフタル将軍との関係は強く、しかも、ロシアもハフタル将軍を支援している。*

こうした状況下では、セラジ首相のリビア7分割は、有効に機能することはあるまい。*