『リビア・セラジがハフタルにトリポリ入るな』

2017年5月31日

 

 カダフィ大佐がリビアを代表していた頃は、彼の特異なキャラクターもあり、リビアが国際にュースに登場する機会が、少なくなかった。しかし、今ではリビアに関心を払うのは、ごく一部のリビアを支配しようと思う、欧米やアラブの政治家たちだけであろうか。

 そのごく一部のリビアを支配しようと思う、欧米やアラブの政治家たちが、リビア国内にある各派を支援し、助言しているために、リビアの国内は全く安定への道が、見えていない。

 いまのリビアを誰が代表しているかといえば、トリポリに拠点を置く、統一リビア政府の代表セラジ首相であろう。彼は国連が創り上げた傀儡であり、リビアの土地に根を張っているわけではない。このため彼の基盤は、極めて不安定だということになる。

 そして、もう一人リビアを代表する人物はといえば、東リビアのトブルクを拠点とする政府の、参謀長ハフタル将軍であろう。彼はカダフィ政権を嫌い、20年の長きに渡って、アメリカに亡命していた人物だ。

この東リビア政府は、最初に国際的認知を得てもいる。実質、彼は東リビア政府を代表する人物であり、軍事力を掌握していることから、存在感は大きい。つまり、リビアには国連がバック・アップするトリポリ政府と、国際的認知()を得たという、トブルク政府が存在している、ということだ。

 それ以外にも、グエイルなどがいるが、彼らは戦闘集団は持っていても、政治的な影響力も、外国との強い関係も無さそうだ。従って、リビアを誰が牛耳っているのかと言えば、西のセラジであり、東のハフタルということになろう。

 リビアではシルテでIS(ISIL)との戦闘が続き、今ではIS(ISIL)はシルテから追放されたが、未だにリビア各地にはIS(ISIL)の戦闘員がもぐりこんでいる。

 リビア南部のセブハ、ジュフラなどでも、戦闘が展開されている、という情報が届いている。しかし、何といってもトリポリをめぐる攻防戦が、最大の関心事であろう。つい最近、トリポリ地域の第二勢力が、セラジ首相側との戦闘を展開した後、トリポリから撤収し、一応セラジ首相が支配を、完了したことになっている。

 その結果、セラジ首相は自信を持つようになったのか、ここに来て突然、ハフタル将軍に対し『トリポリに軍を入れるな。』と言い出している。つまり、ハフタル将軍側が武力を持って、トリポリを制圧する可能性がある、ということなのか。

 しかし、このセラジ首相の発した一言は、今後リビア国内に、より一層の混乱を、巻き起こすかも知れない。ハフタル将軍側に強いトリポリ支配の意欲が無くとも、『入って来るな』と言われれば入りたくなるのが、人情だからだ。

 さて、セラジ首相は不用意にも、ハフタル将軍を刺激する発言をしたと思われるのだが、その背後にはどの国がいるのだろうか。リビア国内がセラジ首相とハフタル将軍側との激戦になれば、『国際的善意』という名目で、リビアへの軍事介入が、出来るようになるからだ。

 セラジ首相のバックにはヨーロッパ諸国や、一部湾岸アラブ諸国が付こうし、ハフタル将軍側にはロシアやエジプトが味方に付こう。アメリカはセラジ首相にも、ハフタル将軍にも気脈を通じているのではないか、と思われる。