エジプトでミニヤに向かう、キリスト教コプト教徒が移動する、バスを狙われて多数が殺害された。エジプト政府は犠牲者の数を26人、負傷者の数を28人程度、と発表したが、重傷者の死亡も予測されている。コプト教徒側は犠牲者の数を35人と発表している。
ミニヤはカイロの南220キロにある、聖サミュエルを祭る教会がある場所で、コプト教徒たちはそこに、団体で巡礼するのが、慣わしになっている。そのため、今回は多くの子供たちも、バスに乗っていて、犠牲になったのだ。
今回のテロについて、今までのところ、どの組織も犯行声明を出していないが、昨年4月に起こった、コプト教会を狙ったテロでは、46人が犠牲になり、IS(ISIL)が犯行声明を出していた。多分、今回もIS(ISIL)による犯行ではないか、と見られているが、それはラマダン(5月27日から始まった)を機に、イスラム教徒とコプト教徒との対立を、煽るための作戦ではなかったか、と見られている。
エジプトには人口の約10パーセントに当たる、1000万人近いコプト教徒がおり、中東諸国の中では最大の人数であろう。それだけに、日常生活のなかでイスラム教徒とコプト教徒との間には、大小さまざまないざこざが起こっており、IS(ISIL)としては犯行を起こしやすいし、コプト教徒に対するテロ攻撃は、リクルートにもなるのだ。
エジプト政府としは、このテロ事件を放置するわけには行かない。そこでシーシ大統領が命令したのは、イスラム原理主義者たちの、巣窟になっている、リビア東部の街デルナに対する、空爆攻撃だった。
デルナの街と周辺には、6箇所のイスラム原理主義者の基地があるが、エジプト軍機はそこを狙って、攻撃した模様だ。エジプト政府はこれまでも何度か、リビアのイスラム原理主義者たちの基地を狙って、空爆攻撃を加えてきていた。
エジプトがリビアの、なかでも東部地域を攻撃するのは、デルナなどにイスラム原理主義者たちを送り出す拠点があり、そこからは大量の武器も送り出され、シナイ半島北部やガザ、シリア、イラクに送り届けられているからだ。デルナはまた、イスラム原理主義戦闘員の訓練所もある、といわれているところだ。
今回のエジプト政府の決定による、リビアのデルナへの攻撃が、どれほどの成果を挙げたかは分からないが、エジプト政府とシーシ大統領は、エジプト国民の怒りを鎮める意味でも、何らかの軍事行動を、取らざるを得なかったのであろう。
どうしても気になるのは、IS(ISIL)によるテロ犯罪が、北シリアからどんどん南に下がって来ており、アフリカ大陸側のアレキサンドリアに始まり、遂には首都のカイロでも起こり、今回はそれよりも南220キロの、ミニヤで起こったという点だ。
シーシ大統領とすれば、何としてでもテロを阻止したい、ということであろう。それには、イスラエルとでもアメリカとでも、協力する意志がある、ということだ。