『ドイツとトルコ・インジルリク空軍基地撤収で揉める』

2017年5月22日

 

ドイツがここに来て、トルコのインジルリク空軍基地の使用を、止める意向を語り始めた。それは、トルコのエルドアン体制が、強引に進めようとした、新憲法賛成大集会を、ドイツが阻止したことに、端を発している。

ドイツはその後も、NATO軍で働くトルコ軍人や外交官などが、450人の政治亡命することを認めている。これはトルコ政府にとっては、相当ショックであったろうと思われる。

そうしたいきさつから、ドイツはこれ以上トルコと関わりたくない、と考え始めているのであろう。そこからインジルリク空軍基地からの、撤収話が出てきたものと思われる。この話が出てきた直截的な原因は、インジルリク空軍基地へのドイツ議員の訪問が、認められなかったことにある。

ドイツ国内では、反エルドアン感情が高まっており、社会民主党の議員などが、トルコのインジルリク空軍基地からの、撤収を早急に進めろ、と騒ぎ出している。これはメルケル首相が抱え込んだ、新たな問題であろう。

メルケル首相にしてみれば、一日も早くインジルリク空軍基地から、撤収したいころであろうが、トルコとドイツの間には、難民の問題が横たわっているのだ。もし、ドイツがこの問題で、対応を誤れば、多数のシリア難民などが、ドイツになだれ込んで来ることが、懸念されるからだ。

トルコはそれを意図的に、やる可能性がある。これまでもトルコから流れ込む、ドイツへの大量難民は、トルコ政府がドイツ政府に対して、圧力をかけるために行ったものであろう、と言われてきていたのだ。

しかし、そうは言ってもトルコに辟易するドイツは、やがて決断をせざるを得なくなろう。既に、ドイツ政府と軍部は、トルコのインジルリク空軍基地から、キプロスやヨルダンの空軍基地への移動を、検討し始めている。

なかでも、ヨルダンへの移動の可能性は高く、ドイツ政府はすでに候補の空軍基地として、ヨルダンのアズラク空軍基地の名前を、公表している。この空軍基地はイラク国境から、すぐそばにあることや、湾岸諸国へのアクセスがいい、という利点があろう。

だが、トルコのインジルリク空軍基地には、250人のドイツ軍関係者が駐留しており、相当数の機材もあることであろう。それをイラクやシリアのISISIL)対応を、進めるなかで行うことは、容易ではあるまい。

そうしたことを見据えてか、トルコ政府の反応はいたって、冷静かつクールだ。トルコのメウルート・ジャウソール外相は『彼らが出ていくことを望むのなら、グッドバイと言うだけのことだ。』と語っている。

もし、アメリカ軍やドイツ軍が、インジルリク空軍基地から撤収した場合、世界なかでも欧米の、トルコへの評価は大幅に下がろうし、NATO内部での地位も、揺らぐことになろう。