トルコのエルドアン大統領が、大喜びでアメリカを訪問した。それは、オバマ前大統領が任期半ばから、エルドアン大統領に対して、冷たい対応をしており、相手にしなかったからだ。オバマ大統領は居留守まで、使っていたのだ。*
このため、エルドアン大統領は新たに選出された、トランプ大統領との間に、強固な友情を生み出したい、と願っていたのだ。そして、その夢がかない今回の訪米となったわけだが、訪米については2か月ほど前から、何度もトルコのマスコミで、報じられていた。*
さて、それだけの期待を持って訪米したエルドアン大統領は、それなりの成果を得ることが、出来たのであろうか。もちろん、トランプ大統領はエルドアン大統領の訪米を歓迎する、と語るとともに、アメリカ・トルコ関係は一層発展させていきたい、とも語っている。だが、それは社交辞令に過ぎまい。*
しかし、問題はエルドアン大統領が、アメリカ側に要求する、二つのテーマに対して、アメリカがどう返答するかだった。その二つとは以下のテーマだ。*
:クルドYPGに対する武器供与の中止。*
:ギュレン氏のアメリカからの追放と、トルコへの引き渡し。*
アメリカ政府はクルドYPGへの武器供与については、エルドアン大統領が期待する、返事をしていない。アメリカはYPGを、IS(SIL)掃討作戦の、最高のパートナーだ、と認識しているからだ。*
結局、このテーマについては、明確な返答を得ることが出来ないで、終わっているようだ。アメリカは昨年のクーデターを非難したり、最近行われた新憲法国民投票への、賛辞でごまかしたようだ。*
ギュレン氏のアメリカからの追放と、トルコへの引き渡し問題についても、アメリカはギュレン氏を、厳しく監視しており、法的手続きを進めていると答え、引き渡す意思がないことを、エルドアン大統領に分からせるように計らったようだ。*
それは当然であろう。アメリカはトルコのエルドアン大統領の独裁体制とは異なり、世界を代表する、法治国家なのだから。*
反対に、アメリカのマスコミ、なかでもワシントン・タイムズ紙には、アメリカの人権団体である人権財団(HRF)の、一面ぶち抜きの宣伝記事が掲載され、そのなかで人権財団は『エルドアンよ、お前は歓迎されていない』とエルドアン大統領と、アメリカ国民に訴えている。*
また、エルドアン大統領の仇敵であるギュレン氏も、ワシントン・ポスト紙を通じて、このエルドアン大統領の訪米の機会に、世界に対し『エルドアンの独裁を許さないでくれ。』と訴えている。彼は『西側諸国はトルコが民主的な国家に、戻れるよう支援すべきだ。』とも訴えた。*
どうやら宣伝戦では反エルドアン側が勝利したのではないか。トルコ政府はエルドアン大統領の訪米を歓迎支持するデモを、在米のトルコ人に呼びかけたようだが、盛り上がらなかったのではないか。その報道はトルコからは伝わって来ていない。