ドイツはNATO加盟国であり、トルコもまた同じ、NATOの加盟国だ。従って、両国の間では、軍事協力があるのは当然のことだ。しかし、ここに来てそのドイツとトルコとの、軍事協力にひびが入ってきている。
世界地図を見れば一目瞭然なのだが、トルコはいわば世界の中心に位置している。トルコからロシア・ヨーロッパのほとんどの首都に、飛行機を使えば4時間弱で、移動できるのだ。
中東諸国はもちろんのこと、中央アジアや北アフリカの国々へも、4時間足らずで移動が可能、という好立地にあるのがトルコだ。そのため、トルコにはNATOの空軍基地があり(トルコの空軍基地をNATOが使っている)、アメリカもドイツもこの空軍基地を使い、IS(ISIL)対応作戦などを、実施しているのだ。
だが、そのような関係も、そろそろ終わりが、近づいているようだ。アメリカ軍はNATOが利用している、トルコのインジルリク空軍基地利用を、止めると言い出し、他の国に移動すると言っているが、それは近い将来、現実化しよう。
同じように、ドイツもインジルリク空軍基地の、使用をやめる方針だ。それは、トルコ政府がドイツの国会議員の、同空軍基地訪問を、阻止したためだ。トルコ政府に言わせれば『時期が悪い』という事らしいが、インジルリク空軍基地へのドイツ議員の、訪問拒否の真因は、新憲法キャンペーンで、トルコが首相や外相を送ろうとしたとき、ドイツがそれを拒否したことにあろう。
ドイツはすでに次の空軍基地として、ヨルダンの基地を候補に選び、実質話がまとまっているのではないか。そうなると、トルコからはNATO軍が、姿を消すことになろう。
それは、トルコにとって国際的なイメージを、大幅に低下させることになるのは、必定であろう。もちろん、そうした変化に、ロシアや中国は喜んでいよう。プーチン大統領はトルコがいま、アメリカに激怒している、クルドのミリシアYPGへの、武器供与をしない、と言い出しているのだ。
中国もまた、トルコのシルクロード・グループへの、参加を歓迎しているし、上海5に加盟することも、歓迎している。それらのことから、トルコが西側諸国から離れ、旧共産圏のロシアや中国との関係を、強化していくのか否かは、まだ判断できない。
ただ言えることは、極めてデリケートな位置に、トルコはいま立っているということだ。ロシアはトルコがアメリカを離れたとしても、アメリカの代理にはなれないし、中国もしかりであろう。下手をすれば、トルコは国際政治の場で、孤立するかも知れない。それはエルドアン大統領の不適切な言動に、主な原因があるのだ。