ヨルダン川西岸地区には、イスラエルに対する抵抗活動家として著名な、マルワーン・バルグーテイ氏がいる。彼はイスラエルの裁判所で、5生の判決を受け(終身刑、)受刑中だが、いままで彼はたびたびハンストを、他のパレスチナ人受刑者に呼びかけて、実行している。
ハンストはそれなりの効果を生み、世界中からイスラエルのパレスチナ人受刑者に対する対応に、批判が集まることになる。その結果、軽い受刑者は釈放され、残りの受刑者への対応が、改善されることもあった。
マルワーン・バルグーテイ氏は今回も、ハンストをパレスチナ人受刑者に呼びかけ、4月17日から1500人が参加し、現在も継続中の受刑者は800人いる、と伝えられている。
問題はそのハンストの主役であり、著名な活動家のマルワーン・バルグーテイ氏が、ハンスト破りをしたということだ。これは彼の独房に設置されている、監視カメラが暴いたものであり、マルワーン・バルグーテイ氏は彼の独房のバスルームで、チョコレートを食べ、塩をなめていたことが判明した。
抵抗のスーパースター的主導者である、マルワーン・バルグーテイ氏が他の受刑の、パレスチナ人に呼びかけた、ハンストを自分で秘かに破っていた、ということになると、彼の精神的抵抗指導者としての、イメージは完全に地に落ちることになろう。
イスラエルではマルワーン・バルグーテイ氏が、独房の中でハンストを破り、食物を口にしている光景が、2度テレビ放映されている。パレスチナ自治政府スポークスマンはこれについて『イスラエル側のゲームであり、作られた映像だ。』を反論している。
しかし、それは説得性を持っていまい。誰もがこの映像を見れば、マルワーン・バルグーテイ氏がハンストを破っている、と思うだろう。問題は彼が何処からそのチョコレート(TORTIT社製)と塩の小袋を入手したか、ということだ。面会者が彼に秘かに、渡していたものであろうか。
イスラエル側はマルワーン・バルグーテイ氏が、これまで何度となく、ハンストを実行してきた理由は、彼が獄中にあっても、パレスチナ解放のための、抵抗運動を継続していることを、パレスチナ人にアピールし、彼のパレスチナ社会における地位を守るためだ、と受け止めている。
しかし、今回のハンスト破りの結果、パレスチナ自治政府がどう言い訳をし、彼の立場を守ろうとしても、多くのパレスチナ人は、彼の革命精神に疑問符を、付けるのではないだろうか。また、国際的にも、彼を始めとするパレスチナ人受刑者の、ハンストによる抵抗を、評価しなくなるではないか。
『ちょっと待て、その一口がミスの元』といった感じだが、残念なことだ。大げさに言うと『パレスチナ抵抗運動の巨星落』であろう。もちろん、イスラエル側は大喜びであろう。