カザフスタンのアスタナで、これまで長期に渡り、シリア問題解決に向けた、各派参加の会議が、開かれてきていた。これは主に、ロシア、イラン、トルコが中心になって、進めてきていたのだが、やっと一定の成果を、上げることができそうだ。
それは、これまで懸案になってきていた、シリア国内に安全地帯を設立する、という計画だ。ロシアもイランもトルコも、それを願ってきていたのだが、なかなか合意に至れなかったのだ。
なかでも、多数のシリア難民が、なだれ込んできているトルコにとっては、安全地帯の設立は、難民の安全な生活を確保するだけではなく、難民の流入という洪水を阻止できる、唯一の方法だったのだ。
トルコには既に、300万人を超えるシリア難民が、入国しているだけに、その対応には莫大な予算と、治安維持、生活支援などという、問題が山積されているのだ。しかも、この300万人という難民の数は、既に、トルコからヨーロッパに移動した、シリア難民を加えれば、これまでに優に、500万人がトルコに入っていた、ということなのだ。
さて、そのシリア国内からの難民流出を防ぐための、安全地帯は何処に設立されるのであろうか。それはいまの段階では、アレッポ、ハマ、ラタキア、イドリブ、ホムス、ダマスカス近郊のゴウタ、そしてダラア、クネイトラにも、設立される予定のようだ。
この計画が現実化すれば、シリア国内は相当安定化に向かう、可能性があることから、今回の安全地帯設立合意について、トルコのエルドアン大統領は『シリア問題の半分が解決した。』と語っている。
しかし、問題はどの国が安全地帯の治安を、維持するかということだ。当然、この合意を生み出した、ロシア、トルコ、イランが主たる責任を、果たすということになろうが、それは大変な作業であると思われる。安全地帯を宣言しても、そこには各派の戦闘員が、武器を持って居残っているわけであり、治安維持部隊が強硬に、戦闘員を抑えようとすれば、戦闘が起こる危険性もあろう。
加えて、膨大な数のシリア国民に、どうやって食糧を配布し、医療サービスをし、その先には住宅や教育を、どのように提供していくのか、ということもあろう。こうなると、ロシア、トルコ、イランだけではカバーできず、結局は国連を引き出し、欧米の協力を得なければならない、ということになろう。
つまり、カザフスタンのアスタナで成立した、シリアの安全地帯設立合意は、まだ時間がかかるということであろう。この先に待ちうけているのは、単に資金や治安維持要員の、派遣だけではない。
『シリア問題のイニシャチブを、どの国が取るのか。』という、極めて政治的な、問題も浮上してこよう。それがこれからの、最大の懸案かもしれない。