『IS撲滅後米軍イラクから撤収』

2017年5月 6日

 

 イラクのアバデイ首相は、アメリカ軍がIS(ISIL)を撲滅した後は、イラクから完全に撤収する、と語った。それが本当に実行されるのであれば、それに越したことはあるまい。アメリカ軍は相手国の問題を解決する、と言って軍を派兵した後、そこに長期的に居座る傾向があるが、イラクの場合はそうではない、ということのようだ。

 しかし、それをまともに信じていいのであろうか、アメリカ軍はイラク国内に巨大な軍事基地と、付設の軍の居住空間、を作ったはずだ。それをイラク側にすんなり渡すだろうか、という疑問が沸いてくる。

 アメリカ軍の将兵たちは、外国にあっては、快適な居住空間を提供されるが、帰国後はそうとは限らない。願わくばそこに居座りたい、と思うのではないだろうか。もちろん、帰国後に駐留時と同じような生活が、出来るのならそれに越したことは、無いのだが。

 アバデイ首相はイラク国内には、外国の軍事アドバイザーはいるが、戦闘員はいないと言っている。その外国人軍事アドバイザーは、アメリカ人とは限らないようで、多数の国から来ていると言っている。

 オバマ前大統領は2010年の段階で、全てのアメリカ軍人をイラクから、撤収させると語り、実行したということだが、トランプ氏が大統領に代わってからも、その方針が守られるかは、まだ分からない。

 最近では、イラク軍が実力を増し、IS(ISIL)が立てこもる、モースルに接近し、周辺の都市を奪還している。その戦闘には、民間のミリシアも参加し、成果を上げている。例えば、ハシド・シャアビー部隊がそれだ。

 イラク軍も100日間かけて、東モースルの要衝を奪還したが、その際に50万人ほどの住民を解放している。しかし、モースルにはいまだに、50万人ほどの住民が残っており、IS(ISIL)側は彼らを人の盾として、使っているようだ。

 イラク政府がモースル奪還には、あと23ヶ月を要すると言っているが、果たしてその期間で、モースル全域を奪還することが、可能なのであろうか。あまり希望的な予測は、し難いと思うのだが。

住民が人質に取られているために、過激な攻撃が出来ない、と言われればそれまでの話だが、イラク政府が語るように、残存のIS(ISIL)戦闘員が2300人なら、もっと早く落とせそうなものだが。モースルとその周辺に、どれほどのISISIL)が残存しているのか、イラク政府は実態を、把握しているのであろうか。

そして、アメリカはきちんと把握できて、イラクにアドバイスしているのであろうか。敵の実数が分からないようでは、戦略は立て難いのではないのか、トルコはどの程度IS(ISIL)への戦闘参加希望者が、イラクに入っているのかを、掴んでいるはずだ。IS(ISIL)の戦闘員はほとんど、トルコ経由でイラクやシリアに、入っているのだから。