トルコのエルドアン大統領が、5月16日にはアメリカのワシントンを訪問し、トランプ大統領と会談する、予定になっている。この訪米に寄せるエルドアン大統領の期待は、相当大きなもののようだ。
もし、話がうまく付けば、エルドアン大統領は懸案になっている、最も複雑な問題であり、彼の敵を片付けることが、出来るからだ。そのエルドアン大統領の敵とは、アメリカに亡命している、フェイトッラー・ギュレン氏であり、彼を何とかトルコ側に引き渡してもらい、死刑にしたいということであろう。
しかし、フェイトッラー・ギュレン氏はアメリカ国内で、犯罪を犯しているわけでもなければ、トルコでもこれといった犯罪を、犯しているわけでもない。従って、アメリカ政府は法の立場から、彼をトルコ側に引き渡すことは、出来ないのだ。
しかし、エルドアン大統領はフェイトッラー・ギュレン氏が、7月16日クーデターの首謀者であるとして、でっち上げの資料を、アメリカ政府に対して大量に、送り続けてきている。
エルドアン大統領はトランプ大統領との話し合いの中で、もう一つの問題を解決したい、と考えている。それはシリアのクルド組織YPGと、トルコのクルド組織PKKを殲滅する問題だ。
トルコのPKKは既に40-年近くも、トルコ軍と戦っており、トルコに言わせれば、明確なテロ組織であろう。他方、PKK側はトルコのクルド人の、トルコからの分離独立を目指す、独立運動闘争組織ということになろう。
トルコにとって頭の痛い問題は、このPKKが今ではシリアのYPGと、連携関係にあることだ。YPGと良好な関係を、構築することが出来たPKKは、トルコ国内で危険が増した場合、シリアのYPG支配地区に、逃げ込むことが出来る、という状態になっている。
従って、エルドアン大統領は訪米時に、アメリカ側とYPGに対する対応を、協議したいのだが、話はそう簡単には進むまい。アメリカは再三のトルコ側の要請にもかかわらず、トルコの意向とは逆にYPGに対して武器を供与しているのだ。そして幾つかの対IS(ISIL)作戦は、アメリカ軍とYPGの協力で進められている。
例えば、シリアのIS(ISIL)が首都と宣言している、ラッカ攻撃では、アメリカはYPGとの共闘を、トルコ軍との共闘よりも優先したのだ。その立場をアメリカが突然変更し、エルドアン大統領の意向にそう方向に、変わるとは思えない。
エルドアン大統領は『トランプ大統領とは気が合う。』と語り、話が一気に進展する、と考えているようだが、実際にはそうはなるまい。アメリカ政府も軍も、エルドアン大統領に対し、既に嫌悪感を強く抱いているし、ヨーロッパも然りだ。
トランプ大統領がアメリカの立場をわきまえずに、エルドアン大統領の繰り出す要求を、どう跳ね除けるのかが見ものだ。