『投票後のトルコ新外交』

2017年4月23日

 

 僅差で勝ったこともあってであろうか、エルドアン大統領はトルコの未来を開くとばかりに、新外交を展開するとぶち上げている。その意気込みは評価したいが、その結果がどうなるのか、については危ぶまれる。

エルドアン大統領はロシア、中国、アメリカ、ヨーロッパのドイツ、オランダなどに対して、集中砲火のような外交攻勢を、かけるつもりでいる。トルコの直面する経済の行き詰まりや、諸外国との間に高まっている齟齬と軋轢は、確かに大改革を必要としていよう。

その新外交方針とはおよそ次のようなものだ。世界の大国に対して切り込んでいくという、勇ましい意欲が感じられるではないか。エルドアン大統領の今後の外交日程は、次のようなものになっている。

:最初の訪問国はインドであり、430日から始まる。インド訪問では経済政治協力について話し合う予定だ。*

53日にはロシアを訪問し、ロシアのプーチン大統領とは、ロシア領のソチで会談が予定されており、シリア問題を始め、農産品輸出問題についても、話し合う予定になっている。トルコはロシアに対して、45億ドルの農産品を輸出していた。ロシア側はトルコのビジネスマンに対して、ビザ発給を緩和する方針を、明らかにしている。

:アメリカ訪問による新関係構築が行われるが、今回の訪米はトランプ政権誕生後,初のものであり、今後の両国関係を占い上では、重要なものといえる。なお訪問は5月半ばに予定されている。訪問に先立ち、エルドアン大統領とトランプ大統領は、電話対談を行ったが、そのなかで、トランプ大統領はエルドアン大統領に対して、『直接会って語り合おう、トルコはアメリカにとって重要な国だ。』と語った、と伝えられている。

 トルコ側はアメリカに対して、ギュレン問題、シリア問題、シリアのクルド組織PYD、ラッカ解放戦などについて、討議することを希望している。*

525日にはブリュッセルで、NATOサミットが予定されており、エルドアン大統領も参加予定だ。ブリュッセル訪問時にはEU側に対し、トルコはビザ問題、PKK問題を話し会う予定だ。ドイツのメルケル首相もエルドアン大統領との、交渉を希望している、と伝えられている。*

51415日は中国でシルクロード諸国会議が開催され、習金平主席を始め関係諸国の首脳が、集まることになっている。*

予定は盛りだくさんであり、交渉がうまくいけば、トルコの将来は明るくなる、ということであろうが、まだ成果は予測できない。ロシアは貿易について、大きくドアを開くとは思えないし、中国もリップ・サービスが最初であろう。中国の経済状況は、決してよくないからだ。*

アメリカやヨーロッパ諸国は、エルドアン大統領の出方を見る、ということではないか。トルコがアメリカ軍に代わって、イラク・シリアに軍を投入してくれるのであれば、ある程度話は進むかもしれないが、アメリカはクルドについては、譲らないのではないか。*