エルドアン政権は僅差で新憲法国民投票に、勝利することが出来た。述べるまでもなく、それはごまかしの結果であり、僅差の勝利は政府が創った偽物だ。投票用紙の偽物がはびこり、投票委員会はそれを認めろ、と政府から指示されていた、と語っている。
投票所には『イエス』の印鑑が置いてあり,イエス・ノーのどちらにその印鑑を押しても、結果はイエスということになる、という仕組みだった。ノーを支持するとして、イエスの印鑑をノーに押せば、それはイエスとカウントされる、という仕組みだったのだ。多くのノーの投票は、無効とされもしたし、数もごまかされているのだ。
当然のことながら、ヨーロッパ諸国が派遣した投票監視委員会は、クレームを付けたが、これに対してエルドアン大統領は『出しゃばるんじゃねえ』とすごんでみせている。しかし、それは彼に対する欧米の印象を、ますます悪くするだけであろうと思うのだが。
問題はこれからだ。トルコ国内では既に、クーデターや大衆蜂起の話が出ている。国民は当然黙ってはいないだろう。トルコの経済状態が良ければそうでもないだろうが、経済は相当悪化しているようだ。投票後にトルコ・リラは値上がりしたと政府は言うが、それは事実ではない。
以前は1ドルに対して、3リラ程度だったものが、3・8リラ程度まで下がり、その後3,6にまで値を戻したが、投票後は3・7以下に下がり、その後3・7を挟んでの上下が続いている。従って、投票後にトルコの通貨は安定し、経済が改善する方向にある、という政府の見通しは嘘だ。
いまトルコの失業率は、過去でも最低であろう。青年層の失業率は遂に24・5パーセントを記録し、農業部門以外の失業率は、全体で15・2パーセントンに上昇している。しかも、トルコの人口はどんどん増えているのだから、この悪化傾向はますます、高進していくことであろう。
トルコ政府の経済無策の結果、トルコ政府はいま53・2億ドルの、予算不足に直面している。この赤字を是正するには、予算を大規模カットするか、エルドアン大統領が強引に進める、ばかげたメガ・プロジェクトを止めるか、大金を外国から借り受けるしかあるまい。
以前ならサウジアラビアやカタールなどの、アラブ湾岸産油諸国から、簡単に借りられたであろうが、今はそうもいくまい。産油諸国も石油やガスの値下がりで、いまは苦しい台所事情にあるのだ。
あの石油によって、金満国家になったサウジアラビアですら、アラムコの株を一部手放し、ついには外国銀行(イスラム・ボンド)から、90億ドルを借り入れる方針だ。さあどうしますか、エルドアン大統領殿。打つ手はなさそうなのですが。ヨーロッパの投票監視委員会の報告が出れば、欧米諸国は一斉にエルドアン非難に、回るだろう。