『イランの大統領選挙』

2017年4月16日

 イランでは5月に、大統領選挙が行われる。そのため、大統領立候補届け出が、始まっているが、立候補予定者は1400人を、越えそうだということだ。しかし、最終的には、適格者の判定が下され、その数は一桁になるのであろう。

 そのなかで、いまのところ注目を集めているのが、3人の候補者であろう。現職の大統領ロウハーニ氏、保守派のエブラヒム・ライーシ氏、そして、元大統領のアハマド・ネジャデイ氏だ。

 アハマド・ネジャデイ氏以外は、宗教職出身者で、イランでは氏ではなく、師を付けるのが普通だ。あるいはそれは勝手に、日本のマスコミが付けているのかもしれないが。

 さてこの選挙で誰が当選するのか、を予測する上では、3候補の置かれている状況を、少し調べる必要があろう。ロウハーニ氏は国民の間では、あまり評判が悪くない、どちらかといえば穏健派のイメージで、受け止められているようだ。

 ロウハーニ氏が最高指導者のハメネイ師と、時折意見の不一致があり、不仲説が流れてもいる。そのため、次回選挙ではハメネイ師が、ロウハーニ氏に代わる候補を、支持するのではないか、といわれている。

 そのロウハーニ氏に代わる候補と思われるが、エブラヒム・ライーシ候補だ。彼は宗教職者であり、56歳の裁判官でもある。極めて保守的な考えで、ハメネイ師にべったりの人物、と見られている。

 その事は、エブラヒム・ライーシ氏を革命防衛隊も、支援する可能性があろう。革命防衛隊はハメネイ師礼讃で、権力を拡大してきているからだ。しかも、国内を保守色の強い大統領が統治すれば、革命防衛隊の利益が拡大する、ということであろう。

 ただ、彼の保守的な考え方を、国民が支持するかというと、そうでもなかろう。イラン国民はもっと自由になりたい、とほとんどが考えているわけであり、これからさらに、イスラム法で締め付けられることを、望んではいまい。

 最後のアハマド・ネジャデイ氏だが、彼はハメネイ師に大統領選挙に、立候補するなと言われ、それを一旦は受け入れていたのだが、土壇場で立候補を宣言した。明確なハメネイ師に対する、裏切り行為であり、ハメネイ師は激怒していることであろう。

 アハマド・ネジャデイ氏の反イスラエル発言は、つとに有名だが、実際はそうでもないようだ。イスラエルのイラン専門家のなかには、彼が大統領になる方が、イスラエルにとってプラスだ、という考えを述べる者もいる。

 問題は、選挙活動がスムーズに展開され、投票結果が正しくチェックされ、それがそのまま公表されるか否かが問題だ。革命防衛隊が力を振るい、投票結果を改ざんするようなことになれば、外交問題に疎いライーシ氏が当選する可能性は、高まるだろう。それはイラン国民にとって、地獄の日々の始まりとなろう。