エルドアン大統領は絶対的優位で進められる、と思っていた憲法改正国民投票で、どうも自分の思惑とは違った結果が、出そうだという不安を、抱き始めたのであろうか。ここに来ておかしな動きを、始めている。
まず彼が以前所属していた、リファー党のスローガンを引きだし、宗教色の強いイメージを、今回の国民投票に利用しよう、とし始めている。それは『AKPに罪を負わせないでください、我々の苦しみを軽くしてください。』というコーランの一節を、改造したスローガンだ。
当然のことながら、リファー党の幹部はエルドアン大統領が、勝手にリファー党のスローガンを改変して、宗教色を出したことに反発している。何やらなりふり構わない、作戦のような感じがするのだが、それだけエルドアン大統領は、焦っているのかもしれない。
述べるまでもなく、投票結果は政府によって改ざんされ、多くの国民が憲法改正を支持した、とするであろうが、あまりにも事実とかけ離れていた場合には、社会混乱が起こる、危険性があるのだ。
既にアメリカの元DIA(国防情報局)トップは『選挙後に戦争は起こらないが、紛争は起ころう。』と予測している。それだけ微妙な状況が、いまのトルコでは生まれ始めている、という事であろう。
もうひとつ、エルドアン大統領が仕掛けたことは、『投票箱を既定の場所から、他の場所に移動させた。』という事だ。これはトルコの南東部で起こり、この地域はクルド人が多数派を、占める地域だ。
普通に投票が行われれば、トルコ南東部全体では、38540人のクルド人有権者がおり、103の投票箱があるが、その投票の80パーセントがクルド支持だということだ。つまり、80パーセントの票が反新憲法に回るということだ。
投票箱が移動させられた街は、ベルデ、ジュデイ、ギュルテペ、ギャプ、ペトロール、ラマン、トルメルチュ、セイトレル、ペトロルケント、フズルといった街だ。そこの15か所の投票箱が他の場所に移されたというのだ。
その結果、投票者は新しい投票箱が、何処にあるのか分からなくなったり、投票所が遠くなり過ぎて、投票に行くのが困難になったりする、ということだ。賛成票を投じる住民には、政府がバスをチャーターして、投票所まで送り届けてくれ、投票しやすくすることは、以前にも行われている。
昨日はトルコ人の友人の誕生パーテイに招かれ、皆で投票結果の予想をした。一番結果から遠い者は、ケバブを皆にご馳走する、という約束だ。多分トルコ政府を全く信用していない、私の予測が一番投票結果に近く、トルコ人の怒りと蜂起を信ずる者の、予測が一番遠いだろう。これでケバブがタダで食えるという事だ。