『シリアは本当に化学兵器で自国民を殺したのか』

2017年4月 7日

 

 シリアのイドリブに近いハーン・シャイフーンという街に対して、シリア軍が化学兵器を投下し、多数の死傷者が出たというニュースは、一瞬にして世界に伝えられた。子供たちが苦しみからであろうか、裸で死亡している写真が、インターネットを通じでばらまかれた。

 一人の子は両手を挙げて、まるで神にでも祈るかのようなポーズで、死んでいた。彼の表情は意外に穏やかだったが、そのことは悲しみを、より強烈に伝えている。誰がこの残虐な攻撃をしたのか、という事が当然問題となっている。

 アメリカ政府はシリアのアサド大統領が、攻撃の責任者だとして、アサド体制打倒の軍事攻撃を始めている。既に、50発の巡航ミサイルが、ホムスなどの軍事基地に、撃ち込まれたということだ。

 このアメリカの軍事攻撃の前には、アメリカとロシアとの間で(1)攻撃の規模(2)米露軍の衝突を避ける(3)中国の周首席訪問時に、強烈な印象を与えること、などが話し合われたということだ。

 今回の化学兵器による攻撃については、アメリカと同盟国は、アサド大統領の犯罪としているが、幾つかの疑問が残る。

シリア軍は化学兵器で、攻撃を加えたのか、ということが第一だ。シリアのムアッレム外相は『そこには反政府側の、テロリストの倉庫があり、その中に化学兵器があったのだ。シリアは化学兵器を使った攻撃はしていない。そして化学兵器はトルコから持ち込まれたものだ。』と語っている。

同様の説明は、ロシアのプーチン大統領によっても語られている。彼は『シリア軍がテロリストを攻撃するために、テロリストが隠れている、大型建造物に攻撃を加えたところ、その中には化学兵器があった。結果的に住民が犠牲になった。』というものだった。

この説明の方が論理的ではないのか。シリア政府が空爆で化学兵器を、住民対象に撃ち込むとは思えない。アサド大統領は戦争の勝利を口にしており、勝利目前に国民に化学兵器を使えば、国際的にも国内的にも、アサド政権への非難が強まるからだ。

ヨーロッパ諸国もアメリカも、つい最近になり、アサド体制は当分の間、放置する方向にあった。つまり、アサド大統領には非人道的な化学兵器で、自国民を大量殺戮する必要は、無かったと思えるのだが。

しかし、いまになっては遅いだろう。アメリカの巡航ミサイル攻撃で、新たな犠牲者が生まれ、アメリカはその攻撃に正当性を、持たなければならなくなった。そうなると、国連などで『シリアは化学兵器による攻撃を、住民に対して行った。』という事が真実として、国際的に認められることになろう。