『エルドアン激怒与党AKPと票結果を分析』

2017年4月22日

 

今回の新憲法に関する、国民投票の結果は、与党AKPにとって、相当ショックだったようだ。エルドアン大統領は最低でも、65パーセント、願わくば、70パーセントの支持を得たい、と思っていたからだ。

ヨーロッパ諸国などの場合、憲法改正については、国民の3分の2以上の賛成が、必要とされているが、トルコの投票結果はそれには、程遠いものであったからだ。トルコの場合、全体で憲法改正賛成票は51パーセントと、半分を2パーセント弱上回っただけだった。*

しかも、その投票結果は政府が各種の不正をして、やっと取り付けたものであった。例えば、政府のはんこが押していない、投票用紙がまかり通り、抗議されても受け付けなかった。また投票所に置いてあったイエスの判は、イエス・ノーのどちらに押しても、それはイエス票とみなされるという、ごまかしだった。*

今回の投票で、トルコの主要都市である首都のアンカラ、最大都市のイスタンブール、そしてイズミール、アンタリヤ、アダナ、エスケシェヘル、デヤルバクルなどでの敗北は、政府としては完全に面子が潰された、ということであったろう。*

投票結果が出た1時間半後には、緊急閣僚会議が開催され、そこで、何故これだけ敗北したのか、ということが討議されたようだ。討議といっても、ほとんどエルドアン大統領の感情が爆発するシーンであり、出身地でAKPが敗北した閣僚たちは、顔色を失ったことであろう。

エルドアン大統領はこの反省会議で『国民に対する人道的配慮や、サービスが足りなかった、プロジェクトが足りなかった。』と語ったらしいのだが、本当の理由は他にあったろう。

投票内容を見ると、憲法改正に賛成した政府寄り野党の、賛成投票率は3738パーセント程度、与党AKPですら70パーセントを割っていた、ということのようだ。エルドアン大統領は閣僚たちに対して、大都市での敗北理由を調べろ、と怒鳴りまくったということだ。

また、トルコの南東部での支持は低く押しなべて反対派に負けている、エルドアン大統領はテロ対策上、南東部は重要だとも語り、国民の支持を増やすよう、努力しろとも語っている。各種の計画を進めて、住民の支持を増やせ、ということだ。これまでの住民サービスは、不十分だったと考えたようだ。

もし、このエルドアン大統領の発言が、正しいとすれば、彼は現実が見えていない、ということであろう。投票が済んだ後、国民の間から反発が生まれ、多くのデモ参加者が逮捕され、野党からの突き上げがあったにもかかわらず、エルドアン大統領は『投票は済んだ。』と語り、ばっさり切り捨てている。

経済は悪化の一途であり、ドイツはトルコの外貨収入源の観光面で、トルコからスペインやギリシャに、観光客が向かうようになった、という報告もある。ドイツはまた、あからさまにトルコのEU加盟に、異議を唱え始めてもいる。

今回の国民投票で勝利した結果()、エルドアン大統領がどんな強権を得ようとも、トルコの経済をそれで改善することは出来まい。エルドアン大統領の苦悩と、国民の彼に対する離反が始まるのは、これからが本番ということではないのか。