2011年以来、アメリカはシリアのアサド体制を打倒するために、各種の工作を続けてきていた。IS(ISIL)を送り込んだのも、ヌスラを結成させたのも、穏健反シリア組織なるものを支援したのも、皆アメリカの工作だった。
それを実質的に支えてきたのは、トルコのエルドアン体制だった。エルドアン大統領はこのアメリカ(サウジアラビアやカタールも背後にいる)の意向を受け、シリアの反体制派を支援し、SFA(シリア自由軍)を支援してきていた。述べるまでもなく、IS(ISIL)への支援は武器資金戦闘員の面でだった。
しかし、アメリカの大統領がオバマ氏からトランプ氏に代わると、アメリカのシリア対応の流れは変わった。アメリカはアサド体制打倒を、第一目標にはしなくなったのだ。それに伴い、これまで送られていた、シリア反体制派への支援は、途絶えることになった。
アメリカの国連大使ニッキー・ヒリー女子は、アメリカにとってシリアのアサド体制打倒は、興味の対象ではなくなったと語った。そして、シリア国民が望むのは何か、それを実行できるのは誰かであり、それをわれわれが支援するには、どうしたらいいかということだ、とも語っている。
また、シリア国民自らが何時まで、アサド大統領が大統領の座に留まるのかを、
決めるべきだとも語っている。オバマ前大統領が唱えたアサド打倒は、既に消え去ったという事であろう。現実的に見ても、今ではロシアとイランが、重要なカギを握っているし、ロシアが進めたIS(ISIL)攻撃の結果、IS(ISIL)は骨抜きにされてしまった。
アメリカがトルコに派遣した国務長官は、トルコのユルドルム首相やエルドアン大統領との会談を行ったが、しかるべき成果を引き出せなかった。トルコ側はギュレン氏の引き渡しを要求し、シリアのラッカ作戦でも、クルドのYPGの参加を拒否しているのだ。
アメリカはYPGについて言えば、相変わらず武器援助を行っているが、トルコにしてみれば、その武器はやがてトルコに向かう、という不安があるのだ。それにもかかわらず、アメリカはYPGへの武器供与を続けているのだから、トルコがアメリカ離れをし、ロシアに接近して行っても、文句は言えまい
近くアメリカのトランプ大統領はロシアのプーチン大統領に会うようだが、そこではどんな話が、行われるのであろうか