『クルドはラッカ解放後連邦に併合』

2017年3月28日

 

 クルドの組織YPGのリーダーである、サーレハ・ムスリム氏はロイターとの電話インタビューで、今後のラッカについて意見を語った。ラッカは述べるまでも無く、IS(ISIL)がイスラム国家の首都だ、と宣言した街であり、非常に重要な意味合いを、持ってきていたのだが、ここに来て、アメリカ支援のSDF(.シリア民主戦線)などに、追い込まれている。

 SDFは主にクルド人の、戦闘員からなる軍団だが、このなかにはアラブ人も多数含まれている。このSDFがラッカを陥落するのは、間近いと見られているが、サーレハ・ムスリム氏はラッカを陥落させた後は、住民投票により連邦の一部にすると語った。この連邦とは、シリア国家のなかに設立されるものであり、シリアから分離する、性質のものではない。

 YPGは既に、シリア北部の大半を、支配下においているが、彼らと協力組織は北シリアを、連邦制にするという考えだ。そこに地方政府を設立する構想であり、それは民主的な連邦ということになる。

 このクルドを主体とする、民主的連邦地域は自主的な、運営が成されることになり、いわば実質的な自治地域ということであろう。その先に見え隠れするのは、シリアのクルドの、シリアからの分離独立であろう。YPGのリーダーは北シリアを、民主的な連邦地域にしなければ、今後も流血が継続する、と警告している。

 このYPGのリーダーの発言に、一番頭を悩ませているのはトルコであろう。トルコがシリア問題に介入した最大の理由は、シリア北部を占領し、トルコに併合することにあったからだ。トルコ側からすれば、オスマン帝国時代には、そこはトルコの領土だった、ということになるからだ。

 しかし、今回のYPGの宣言で、北シリアはシリア国内の一地域に、留まるということであり、トルコとしては手が出し難くなったのだ。シリアの領土の一部ではシリアと戦わなければならないし、現時点ではトルコがシリアを攻撃する、何の正当性も無い。

 その事に加え、トルコを悩ませているPKK(クルド労働党)と、YPGは兄弟関係にある、お互いクルドの組織なのだ。従って北シリアが連邦の一部として、シリア領土内に留まった場合には、PKKは何時でもトルコ軍から逃れて、そこに入れるということになる。

 つまり、トルコのPKK対応が、極めて困難になるということだ。そして、このYPGを含むSDFは、アメリカの全権的な支援を受けていることも、トルコにとっては頭痛の種であろう。この問題に対する対応を、少しでも間違えれば、敵はクルド組織だけではなく、アメリカということになるからだ。