*トルコのエルドアン大統領が、猛烈な勢いでオランダを始めとする、ヨーロッパ諸国を非難している。その原因は、彼が考えた在欧トルコ人の、新憲法投票キャンペーンの、邪魔をされたからだ。*
ヨーロッパに長く住むトルコ人の多くは、既に相手国の国籍を持っているのだが、エルドアン大統領にしてみれば、彼らもトルコ国民に違いはない、ということのようだ。そのため、ヨーロッパ各国に代表団(閣僚)を送り込み、そこでトルコ人を集め、新憲法支持の大集会を、計画したのだ。*
* しかし、それはヨーロッパ諸国側からは、治安維持上問題があるとして、開催を禁じられることになった。このため、強引にオランダに入ったメウルート・チャウソール外務大臣は、大集会を開催することが出来ずに、帰国している。*
* 加えてこのオランダに陸路入国し、集会を開催しようとした、ファトマ・ブリュト・カヤ家族社会大臣は、国境で逮捕され、帰国させられている。彼女の場合は現地の警官に、銃口を向けられたことが、トルコでは大問題になり、激しい非難を浴びることになった。*
また、オランダでは警察が、トルコ人のデモを解散させるために、警察犬を使い、その警察犬がデモ参加者を 噛んだことが、トルコ側の怒りを買った。この出来事について、エルドアン大統領は『まるでローマ時代の闘技場を思わせる、非人道的な行為だ。』という内容の非難を浴びせている。*
ローマでは闘技場にキリスト教徒などを入れ、それをライオンなどに襲わせていた、ということを思い起こしての、非難だった。エルドアン大統領はまあ次から次と、相手を非難する言葉を見つけ出すものだ、と感心させられるほどだ。
エルドアン大統領はこれらの非難の前には、『集会を開かせないドイツやオランダは、ナチの時代と同じだ、現代のナチ国家だ。」と非難している。さすがに、ナチという言葉を持ち出されたドイツは、黙って入られなかったようで、メルケル首相が厳重な抗議を、エルドアン大統領に行っている。
こうした非難の言葉の数々に加え、最近になり、エルドアン大統領は『ヨーロッパ諸国は、宗教戦争を始める気だ。』とも非難している。これはヨーロッパの国が『雇用者にはスカーフの着用を禁止する権利がある。』ということを認めたことに、起因しているようだ。
スカーフの着用は、もちろんムスリム女性がその対照であり、キリスト教徒からすれば、スカーフの着用が腹が立たしく、不快なものになっていたのであろう。
問題はこうした、トルコとドイツ・オランダなどの関係の悪化が、NATO加盟国間の関係を、悪化させるという懸念だ。このためNATOの高官は、トルコとオランダ・ドイツとの関係改善を、呼びかけている。馬鹿らしいようなことが、とんでもないも問題に、飛び火していくという、典型であろうか。