『バグダーデイ満身創痍砂漠を逃げ惑う』

2017年3月 9日

 

アブーバクル・バグダーデイことイブラヒム・サマライが、IS(ISIL)のリーダーとなり、自らをカリフと名乗ったのは2年ほど前のことだ。彼はヌール・モスクでカリフ制を宣言し、自らをカリフだと名乗ったのだ。

つまり、彼は自身を世界全体の、ムスリムのリーダーだ、と宣言したということだ。そしてイスラム世界を彼の支配の下にまとめて、一つ国家にしようとしたのだ。確かに、最初の1年半ほどは、向かうところ敵なしで、たちまちにしてIS(ISIL)はシリアの多くと、広大なイラクの領土を、支配するに至った。

 この段階では、シリア軍もイラク軍も、IS(ISIL)との戦いで勝利することは、出来なかった。この流れを変えたのは、シリアのクルド組織が、シリア北部の街コバネで展開した、IS(ISIL)との戦いであったろう。IS(ISIL)は弱小なクルドの組織に、敗北したのだ。

 もちろん、このクルドの勝利の裏には、それなりの仕掛けがあったものと

思われる。それ無しに、クルドがIS(ISIL)に勝利することは、無かったろう。全ては大国の影響が及んでいた、という事であろう。

 もう一つのIS(ISIL)の弱体化の理由は、ロシア軍が本格的な攻撃を、始めたことによろう。ロシア軍の空爆で多くのIS(ISIL)の拠点が破壊され、大量の武器も同時に、破壊されたからだ。

 そして、その後,アメリカ軍もイラクで、本格的な軍事介入を始め、イラク軍は次々とIS(ISIL)の拠点を、奪還してきている。そして、ついにIS(ISIL)はイラクにおける最後の拠点、モースルをほぼ失いつつある。

 アブーバクル・バグダーデイはこのモースルの戦いが始まって以来、沈黙を守っていたが、ここに来て発言し始めている。その発言内容は、いずれも弱気なものであり,IS(ISIL)のメンバーに帰国することを勧め、戦う者は自爆しろと言っている。

 アブ-バクル・バグダーデイ自身はというと、IS(ISIL)の戦闘員が集結しているモースルなどの都市部ではなく、砂漠のなかを転々としているようだ。そして砂漠のベドウインの家族に、匿ってもらっている、と言われている。

 こうしたことから、今ではアブーバクル・バグダーデイの消息を、確認することは出来なくなっている、という事のようだ。つまり、IS(ISIL)のメンバーでも、幹部の多くが、既に殺害されており、アブーバクル・バグダーデイと連絡を取れるレベルの者は、残っている者が極めて少ない、というとであろう。

 そして、アメリカが得意とする携帯電話や、インターネットの盗聴も、アブーバクル・バグダデーイ側がよくそのことを承知しており、ほとんど使用していないのであろう。そのために居場所の確認が、取れないのであろう。

 ここまで来ると、アブーバクル・バグダーデイは砂漠の砂のなかに、うずもれるように生涯を終えるのが、一番幸せなのかもしれない。しかし、そのことがIS(ISIL)の終わりではない。あるカーイダはビンラーデン亡き後も、いまだに健在であり、広範囲に広がっている。IS(ISIL)も同じような形になるのではないか。アブーバクル・バグダーデイの亡霊が、欧米にも現れるという事であろう。