『ウイグル人のビデオISが編集公開』

2017年3月 4日

 

 中国の西のはずれに、新彊という地域があるが、その地域には元々は、ムスリムが住んでおり、中国政府はこの地域の人口バランスを変えるために、多数の中国人を送り込んできている。

 中国政府の新彊のムスリムに対する弾圧は、激しいものであり、数百人以上のムスリムが、殺害されているのだが、あまり外部には情報が流れて来ていない。ムスリムに対して、豚を食べるよう強要したり、金曜日の礼拝を禁止したり、といういわば心理戦も、展開しているのだ。

 その新彊の地域には、ウイグル人と呼ばれる人達が住んでおり、彼らはトルキスタン人あるいはウイグル人だと自称している。このウイグル人たちは、細々とではあるがこれまで、中国政府の対応に抗議行動を、起こしてきていた。

 しかし、シリアにヌスラが登場し、IS(ISIL)が登場してくると、ウイグル人の姿がこの地域に見え始めたのだ。ウイグル人がシリアやイラクで軍事訓練を受け、戦闘にも参加し始めたのだ。

 その事は、多分2年ほど前に始まった、と記憶するが、それ以前であったかもしれない。この情報を目にしたとき、やがて彼らは新彊に戻り、本格的な武力闘争を始めるのではないか、と考えていた。

 今回IS(ISIL)が製作し、報道したと言われているビデオは、ウイグル人の紹介が全てであり、30分程度の長尺ものだということだ。内容はウイグル人が中国政府の非道振りを、激しく非難し、やがては報復すると言っているのだが、同時に報復活動は、アメリカ、ロシア、中国で展開される、と言っている。

 ウイグル人の軍事トレーニングの状況も、このビデオには収められてあり、彼らは『中国の川を、中国人の血で赤く染めてやる。』とも言っている。ビデオに登場する人物の言葉は、新彊のヤルカンド地方の訛りだ、ということのようだ。

 中国政府の報道官は、このビデオを見ていないと言い、特にコメントする気はない、ということのようだ。他方、アメリカのニュー・オーリンズにあるロヨラ大学の、ウイグル問題専門家リアン・スム氏は『これはIS(ISIL)の宣伝が主であり、ウイグルと中国政府との関係を、アピールすることは、主題ではないようだ。』とコメントしている。

 いずれが正しいかは別に、新彊地区のウイグル人ムスリムが、何らかの新たな行動を起こす可能性が、出て来ていることは、事実ではないのか。そうだとすれば、新彊地区だけではなく、北京や上海、そして中国人が多数居住する、東南アジアも攻撃目標になる、可能性は否定出来まい。これらの地域では注意が必要になってきた、ということではないか。