『エジプトのムバーラク元大統領釈放』

2017年3月 3日

 

 エジプトの政治は軍によってとりしきられてきている。現在のシーシ大統領も軍の出身だが、その前のムバーラク大統領も、その前のサダト大統領も、そして第二次世界大戦後にエジプトを共和国にした、ナセル大統領も皆軍の出身だった。

 ナセル大統領は1956年ごろから、1970年に死亡するまで、大統領の地位にあり、その後を継いだサダト大統領も、1970年から1980年まで、大統領職にあった。そして、ムバーラク大統領はその後、2011年まで大統領の地位に就いていたのだ。つまり、彼はほぼ30年間に渡って、エジプトの大統領職を勤めてきたのだ。

 エジプトで起こったアラブの春革命のなかで、彼は失職するわけだが、絶対的権限を持っていただけに、刑務所に入っても特別待遇できている。彼は誰にでも何時でも会えるし、外のレストランから食事を、届けさせることもできていた。

 ムバーラク元大統領に関する、種々の犯罪容疑が、裁判所で調べられ、最後に残ったのは、2011年の革命当時、100人を超えるデモ参加者が、警察や軍隊によって、殺されたことに対する責任が、ムバーラク元大統領にはあったのか、という点だった。

 もちろん、ムバーラク元大統領は『自分の命令によるものではない。』と責任を回避した。そして彼が88歳という高齢であることもあり、結果的に裁判所は彼を釈放することになったのだが、社会的な反響を考慮して、シーシ大統領は釈放を、許可しなかった。

 その方が、ムバーラク元大統領の身の安全が守られ、しかも、病気治療も完璧にできるのだ。軍の病院はエジプト国内でも、最高のレベルにあるのだ。ムバーラク元大統領は今後、外国からの賓客にも、自由に会えるだろう。これ以上、何も望むことはあるまい。