来る3月29日に、ヨルダンの首都アンマン市で、アラブ・サミットが開催される予定だ。アラブ・サミットは定例で行われる性質の会議であり、特に珍しいことではないのだが、今回ばかりはそうとばかりも、言っていられないようだ。
この会議には、シリアのアサド大統領が参加する、予定になっているからだ。2010年以来続いている、シリアの内戦のために、シリア政府はアラブ・サミットからボイコットされてきていた。勿論、アサド大統領の参加も、認められないでいたのだ。
今回、アサド大統領がアラブ・サミットに、参加する運びとなったのは、ロシアのプーチン大統領の後ろ盾と、開催国ヨルダンのアブドッラー国王、そしてアラブの重鎮であるエジプトの、シーシ大統領の働きかけによるものだった。
問題の焦点は、これまでアサド体制の打倒を、声高に叫び続けているサウジアラビアが、どうアサド大統領に対応するか、ということだ。アサド大統領とサウジアラビアのサルマン国王は、握手をするのか、言葉を交わすのかに、関心が集まっている。
ただ言えることは、今の段階ではこのことは、相当に煮詰まってきているのではないかという事だ。つまり、アサド大統領の側もサルマン国王の側も、相手をある程度は受け入れる方向に、あるのではないかということだ。
こうした大きな変化が、アラブ世界のなかで、あるいはシリアとサウジアラビアとの関係で、生まれてきているのは、一言で言えば、アメリカの中東諸国への影響力の、低下であろう。
ロシアの中東諸国への影響の拡大が、世界的に話題になっているが、その関係でロシアが仲介に動いた場合、アラブのいずれの国も、無視できなくなってきているのであろう。ロシアとイランとの関係は、現在すこぶる良好だが、そのイランとサウジアラビアは緊張関係にある。
サウジアラビアは強気な発言をしながらも、イランと一戦を交えるつもりは、毛頭なかろう。そうなると、ロシアのイランへの働きかけが、どうしても必要になる、ということだ。
反対にアメリカは、最近ますますイランに対する、強圧的な対応を強めてきている。これではサウジアラビアはアメリカに対して、イランへの仲介を期待できまい。
いずれが真実であるかは分からないが、ロシアのアラブ諸国への、影響力の拡大が、アラブ同士の仲直りに効奏していることは、うれしい限りだ。何とかアサド大統領とサルマン国王の、握手が実現してほしいものだ。