シリアでもイラクでも、IS(ISIL)の置かれている状況は、決して有利とは言えないようだ。シリアではアレッポ戦で、ほとんど追い込まれた状態になり、そこから多数のIS(ISIL)戦闘員が、他の場所に逃亡している。
しかし、だからと言ってIS(ISIL)は敗色を濃くしている、とばかりは言えないようだ。シリアの首都ダマスカスの近郊での戦闘では、他のグループとも協力してであろうが、IS(ISIL)は優位に立っている。
その結果。シリア軍はこのIS(ISIL)などへの対応に追われると、アレッポが手薄となり、再度IS(ISIL)が失地を挽回している、という情報もある。つまり、シリア軍はいま、もぐらたたきゲームを強いられている、という事であろう。
IS(ISIL)の最も大事な拠点である、ラッカでの戦闘でも、IS(ISIL)は追い込まれ、そこから多数のIS(ISIL)戦闘員が逃亡している、という事のようだ。ラッカについてはアブーバクル・バグダーデイなどの檄もあり、死守する構えだったようだが、物量作戦の前にはかなわない、という事であろうか。
ちなみに、ラッカの戦闘にはトルコ支援のシリア組織SDFや、クルドのPKKと連携しているPYDの他に、アメリカ軍が加わり、加えて、ロシア軍も参加しているもようだ。
同様のことは、イラクの戦線でも言えよう。モースル戦はアブーバクル・バグダーデイがカリフ宣言をした、モスクがあるところだけに、何としても死守したいという事だったが、ついにはアブーバクル・バグダーデイも、陥落を認める発言をし、逃亡希望者は逃亡し、戦う者は死ぬまで戦えと言っていた。
その結果、残存のIS(ISIL)戦闘員たちは、まさに死を賭しての戦いを、続けている。そのために、イラク軍は最後の詰めの一手を、打てずにいるようだ。ここからも相当数のIS(ISIL)戦闘員が逃亡し、一部はラッカに移動している模様だ。
こうしたIS(ISIL)不利の情報が流れる中で、二つの新たな状況が生まれた。一つはアフガニスタンに、IS(ISIL)の戦闘員が多数移動している、という事実だ。
もう一つは、ロンドンでつい最近起こった、テロ事件であろう。IS(ISIL)はこのテロについて、犯行声明を出している。IS(ISIL)によれば、このテロ犯行は、イギリス軍がアメリカ軍のイラク・シリアでの、抵抗者に対する空爆作戦に、参戦していることに対して、報復したものだということだ。
イギリスの警察・内務省の発表によれば、イギリス国籍を持つムスリムであるハーリド・マスウードは、既にMI-5の網にかかっていた、イスラム過激派の要注意人物一人だった、ということだ。
しかも、イギリス内務省の発表によれば、この人物はIS(ISIL)のイデオロギーに、傾倒していたということだ。エルドアン大統領が語ったように、ヨーロッパ人は表の通りを歩けないような、状況になって行くのであろうか。IS(ISIL)を支援してきたトルコは、責任を免れられるのであろうか。