IS8ISI)が首都だと宣言している、シリア北部の街ラッカを誰が落とすかが、いま注目されている。ラッカを落とすという事は、世界に対して、IS(ISIL)を自質的に打倒した、という事を宣伝できるため、その効果は大きいだろう。
ラッカをIS(ISIL)の手から、奪おうとしているのは、シリア政府軍であり、シリアのミリシア各派であり、アメリカに支援されるクルド部隊であり、トルコ軍という事になる。
しかし、IS(ISIL)にとって、ラッカは特別な意味を持っており、ラッカが陥落した場合、それはIS(ISIL)のシリアにおける、消滅を意味することになる。従って、IS(ISIL)はラッカに多数の戦闘員を集めており、必死でラッカを守るつもりでいる。
そのために、ラッカを陥落させるということは、容易ではない。ラッカ奪取を狙っている各国各派も、このために大きなリスクを、払うつもりはないようだ。IS(ISIL)との戦いでは、イラクのモースルでも手古摺っている。既に戦闘が最終段階に入ってから、4か月もの時間が経過しているのだが、モースルの半分しか奪取していないというのが、実情のようだ。
このモースルの戦いには、各派が重兵器を持って参加しており、アメリカ軍の強力なサポートがあるにもかかわらずだ。シリアの場合もアメリカ軍は500人の特殊部隊を投入しており、クルドのSDFを支援している。
もう一つの問題は、トルコ軍の処遇をめぐるものだ。トルコ軍はラッカ作戦に手を出しているが、これを無視して進めることは、シリア軍にとっても、アメリカ軍にとっても、ミリシア各派にとっても、難しい問題であろう。
既に、シリア軍はトルコが支援する、反シリア・ミリシアと、武力衝突を起こしているのだ。アメリカのトランプ大統領はアサド体制や、ロシアとの協力による、ラッカ作戦の遂行を、口にし始めている。
ラッカ対応が複雑化していることから、いずれの国や組織が、ラッカを奪取できたとしても、その後には、その軍は占領軍だという非難を、受けることになろう。クルドは当然のことながら、トルコ軍がラッカを支配することになれば、『占領軍だ。』と非難しよう。
アメリカと手を組むクルドの部隊は、早急なラッカ奪取を望んでいるが、それは政治的な複雑さが、これ以上大きくならないことを、望んでいるからであろう。しかし、マンビジュの攻略には、10週間がかかったし、アルバーブ奪取にトルコ軍とミリシアは、3か月以上の時間をかけている。
ラッカはアルバーブよりも、マンビジュよりも大きいことから、攻略にはもっと時間がかかる、という事であろう。その事によって発生する、犠牲と費用は、少なくなかろう。